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チーズケーキ研究

なぜチーズケーキはクリーム状や液体状のものが存在するのか? チーズケーキの多様さと多様になった理由を探る

馬喰町・バクロコモン(bakuro COMMON)の生レアチーズケーキの写真 (9)チーズケーキ研究

 他のケーキに比べて、チーズケーキは色々な形のものが存在する。それはいったいなぜなのだろうか。

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色々な形のチーズケーキが存在する

 ショートケーキやモンブラン、パウンドケーキやシフォンケーキなど、世の中には様々なケーキがある。多くのケーキは、どこで買おうと概ね似たような形、構成、質感をしている。ショートケーキであれば円柱か四角柱で、スポンジとクリームと果物で構成されている。モンブランであればスポンジやビスケットなどを土台に、栗やクリームなどを載せ、最後に栗のペーストで飾りつける。パウンドケーキもシフォンケーキも、その範疇から大きく外れるような形状、質感のものはあまりない。

・クリーム状でも存在するチーズケーキ

 一方チーズケーキはどうだろう。ドロドロでクリームのような質感で、瓶、あるいはプラスチックのカップに入っていて、スプーンを使わなければ食べられないようなチーズケーキがある。しかも、このようなチーズケーキは洋菓子屋のみならずコンビニやスーパーでも一般的にみられる。まれにといった程度のものではない。そして瓶に入ったクリーム状の食べ物が「チーズケーキ」という名前で販売されていることに違和感を持つ人はまずいない。

瓶に入ったチーズケーキ

 一方でカップに入ったショートケーキ、あるいはモンブラン、シフォンケーキはあまり見ない。まれに販売されることもあるが、その場合は「スプーンで食べる」「カップで・・・」といった解説のような文言が添えられる。チーズケーキの場合はそのような文言はまずない。これはつまり、カップのチーズケーキは見慣れたものだが、他のケーキがカップだと、イレギュラー感があり注釈が必要になるということだろう。

 クリーム状のチーズケーキは他にもある。以前とあるカフェで「レアチーズケーキ」を注文したのだが、その時に出てきたのが、皿の上に、クリーム状のものが載せられただけの食べ物であった。このような形状のチーズケーキは珍しいものではなく、たびたびみられる。

とあるレストランで注文したチーズケーキ
とあるカフェで注文したチーズケーキ

 チーズケーキ以外のケーキで、このようなクリーム状のものが出てくることはあるだろうか。おそらくまずない。むしろレストランやカフェなどでショートケーキを注文して、スポンジとクリームとがぐちゃぐちゃになったクリーム状の食べ物がでてきたとしたら「メニューが違う」と思うのではないだろうか。パウンドケーキ、シフォンケーキ、モンブラン、ザッハトルテなどのケーキが、クリーム状で出てきたら「なんか違う」と思うに違いない。
 
 しかしチーズケーキはクリーム状でも「チーズケーキとはそういうものだ」となぜか受け入れられる。一瞬戸惑う人もいるかもしれないが「そういうチーズケーキもあるよね」といったように、すぐに納得できるのではないだろうか。

・「飲むチーズケーキ」と他の「飲む〇〇」

 チーズケーキは液体でも存在する。俗に「飲むチーズケーキ」といった名前で売られている食べ物(飲み物)だ。これはチーズケーキというよりも、スイーツ系ドリンクの一種というのが正しいかもしれない。一方で、チーズケーキほどドリンクになる機会が多く、またドリンクになっても違和感がないケーキは他にはない。

 固体のケーキを「飲む〇〇」といったようにドリンクしたものは数種類ある。たとえば次のような。

※URLは参考ページ

 このように様々なケーキ・スイーツが飲み物になっている。ただし飲むチーズケーキとその他の飲む〇〇には決定的な違いがいくつかある。
 
 1つは販売する店の多さである。飲むチーズケーキは、それを販売するカフェや洋菓子屋、メーカーが存在し、現在でも飲むチーズケーキを販売する店は増えている。一方で他の飲む〇〇は、販売する店はほとんどない。
 
 また販売する期間の違いもある。飲むチーズケーキは、定番商品として販売する店がたくさんある。一方で飲むショートケーキ、飲むモンブランなどは大手飲料メーカーが、ネタ的に期間限定で販売するのみである(例外的に飲むティラミスを定番で販売する店が存在するが、ティラミスはチーズケーキの一種だといえる)。

 飲むチーズケーキとその他の飲む〇〇とで、受け取る印象の違いもある。チーズケーキは液体になってもさほど違和感がない。しかし他の飲む〇〇は、特にショートケーキやモンブランは、やや違和感があるように思える。このように同じ飲む〇〇でも、チーズケーキとその他のケーキではその扱いが決定的に違うのである。

 チーズケーキは色々な形で存在する。色々な形で存在しても違和感がない。しかし他のケーキは違う。チーズケーキと他のケーキとでなぜこのような違いがあるのだろうか。

なぜチーズケーキは様々な形で存在するのか? 

 色々な形のチーズケーキが存在すること、また色々な形のチーズケーキがあっても違和感がないのも、そもそもチーズケーキの材料が液体に近いものが多く、色々な形状にできるからではないだろうか。

・チーズケーキの材料のほとんどはクリーム状か液体状

 チーズケーキの主な材料はクリームチーズをはじめサワークリーム、生クリーム、卵、ヨーグルトなどである。これらはどれも液体かクリームに近い質感のものである。チーズケーキは、前述のクリームや液体状の材料を固めるために、卵を混ぜて焼いたり、ゼラチンを混ぜて冷やしたりする。この固める調理を省けば液体やクリームのままだ。つまり、チーズケーキは簡単にクリーム状や液体状にできるのである。

 他のケーキはどうだろう。ショートケーキをそのまま液体やクリーム状にすることはできない。フードプロセッサーや泡立て器でぐちゃぐちゃにする他ない。カップに詰め込むこともできるが手間が増える。材料にも固体が使われる。
 
 最近では缶に入ったショートケーキや瓶に入ったショートケーキが存在するが、販売しているのはごく一部の店だけである。全国でも数件程度だ。一方、瓶に入ったチーズケーキを販売する店は無数にある。このような差があるのは、ショートケーキは自立するケーキとして作ったほうが楽だからである。チーズケーキは瓶に入れてもさほど手間は変わらない。カップのショートケーキやモンブランは奇をてらってつくる料理の1つでしかない。瓶に入れたからといって食感が大きく変わるわけでもない。

 他のケーキも同じである。モンブランもショートケーキと同じように、形がある程度決まってしまっている。パウンドケーキやシフォンケーキなどは、液体状やクリーム状になることは到底想像できない。その他、あらゆるケーキの場合を考えてみてもそうである。チーズケーキのようにクリーム状や液体状で存在できないようなものがほとんどである。

なぜ色々な形のチーズケーキがあっても違和感がないのか?

 チーズケーキにはクリーム状や液体状が存在する。このように色々な形状のチーズケーキが存在する理由の1つは、そもそも材料が流動的であるからであると述べた。続いては、クリーム状や液体状など、様々な形のチーズケーキが違和感なく受け入れられている理由について考えていく。
 
 結論を先に述べると、その理由はこれまで何度もブームを繰り返すなかで、色々なタイプのチーズケーキが生まれ、私たちは色々なチーズケーキに慣れていったからではないだろうか。

・ある食べ物がブームになるときその食べ物は多様化する

 ある食べ物がブームになる時、その食べ物は多様化する。たとえば2020年頃、イタリアの食べ物であるマリトッツォがブームになった。ブーム当初は、丸くて柔らかいパンに生クリームをサンドした普通のマリトッツォしか見られなかったが、ブームが加熱するとチョコレートクリームやストロベリークリーム、ピスタチオクリームを使ったものが登場した。他にも生クリームのなかにオレンジピールを混ぜたり、板チョコやピスタチオをトッピングしたマリトッツォが生まれた。
 さらに、マリトッツォのブームに便乗する形で「〇〇トッツォ」といった食べ物が急増した。コッペパンに卵サラダを挟んだだけの食べ物が、マリトッツォという名称で販売される現象も起きた。

 ここ最近はカヌレがブームであるが、例に漏れず多様なカヌレが生まれている。それまで鐘の形をしたオーソドックスなカヌレしか見られなかったが、ブームになった途端、カヌレ風のグミや生カヌレ、半熟風カヌレ、カヌレケーキ、生ティラミスカヌレ、カヌチー(カヌレとチーズケーキを合体させたもの)、生クリームや抹茶クリームをトッピングしたカヌレなど、形も色も食感も様々なものが生まれた。このようにある食べ物がブームになる時、その食べ物は多様化する。この現象は、タピオカミルクティーやティラミスでも見られたものである。

・チーズケーキはそのブームのなかで多様化を繰り返した

 そしてチーズケーキもブームによって多様化した。2019年頃のバスクチーズケーキに端を発するチーズケーキブームでは、チーズテリーヌやバスクチーズケーキ風のピノ、チョコパイ、飲むチーズケーキの急増など、多様化が見られた。
 実はチーズケーキは近年のブーム以外にも、過去に何度かブームを経験している。最初は1970年代で、外食ブームと重なる形でチーズケーキが注目された。
 続くブームは1990年代。この時注目されたのがティラミスで、社会現象となった。また同じ頃に、大阪の焼き立てチーズケーキがブームとなり、類似の商品を販売する店が急増した。さらに付け加えるなら「チーズ蒸しケーキ」のスマッシュヒットもある。そして2019年頃のバスクチーズケーキに端を発するブームである。
 
 このようにチーズケーキは何度かブームを経験している。そしてブームになるたびに多様なチーズケーキが生まれたと考えられる。私たちはこれまでの度重なるチーズケーキブームのなかで、色々な形のチーズケーキを受容した。最初のうちは「これってチーズケーキなの?」と疑問視したかもしれない。しかし多種多様なチーズケーキを見るうちに「チーズケーキってそういうもの」と液体やクリームでも、違和感を持たなくなっていったに違いない。

 まとめると、チーズケーキにおいて、クリーム状のものや液体状のものが違和感なく受け入れられているのは、チーズケーキが何度かブームを経験し、その度に様々なチーズケーキが生まれ、人々はそのチーズケーキの自由自在性に慣れていったからである。そう私は考える。
 
 クリーム状のチーズケーキや液体状のチーズケーキが具体的にいつ頃から存在しているのかはまだ分からない。今後の課題としては、その発生時期を突き止め、それらのチーズケーキがどのような時代背景のなかで生まれたのかを調査していきたい。

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