その他の洋菓子や洋菓子屋について

ミルクレープの歴史とミルクレープの特徴について|なぜミルクレープはチェーン店にしかないのか?

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 何層に重なったクレープのモチモチした食感と、クリームの口どけを楽しめるミルクレープ。クレープとクリームというシンプルなケーキでありなが、断層のような断面は迫力があり、そして何よりクセになるような美味しがある。現在ではミルクレープは、不二家、シャトレーゼといった定番のケーキ屋ではもちろんのこと、ドトール、ベローチェなどのカフェから、コンビニやスーパーでも買える定番のケーキになった。

 一方で、定番ケーキであるにもかかわらず、ミルクレープはその歴史や特徴について、あまり考察されていないのではないだろうか。そんな思いがあり、今一度ミルクレープについて深く掘り下げてみることにした。

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【ミルクレープの歴史】

 ミルクレープは日本で生まれたケーキである。海外でも「Mille Crepes」という日本とほぼ同じ名前で売られており、海外のネット記事でもミルクレープは日本で生まれたという内容の記事を多くみかける。ゆえにミルクレープは日本生まれということで間違いないだろう。

 ミルクレープの名前の「ミル」は「千」を意味している。「千枚の葉」を意味するフランス菓子の「ミルフイユ」に近い名前である。構成もそっくりで、間にクリームをサンドしていることから、ミルクレープは確実にミルフイユ(ミルフィーユ、ミルフォイユとも)に影響を受けて生まれたケーキだと考えられる。

1976年にノンノのなかでミルクレープが紹介される

 ではこのミルクレープはいつ頃から日本に存在しているのだろうか。

 ミルクレープという料理が登場するのは1976年の『ノンノ』のなかである。「アーバンライフメトロ」というウェブマガジンの記事によれば、1976(昭和51)年9月20日号の『ノンノ』に「ミルクレープ」という名前とともに、そのレシピが紹介されているそうだ(参考:『超高級デザートだったクレープを庶民の「定番スイーツ」に変えた立役者は誰だ?』)。Wikipediaやその他のネットで記事では、ミルクレープが誕生について別の説が紹介されている。たとえば西麻布にルエル・ドゥ・ドゥリエールと南麻布にペーパー・ムーンが元祖であるという説(具体的な販売時期は、信頼性のある情報では公開されておらず、単に2つの店が元祖であると紹介されている)や、1988年にイタリアンのシェフが開発したとする説など。一方で、どちらの説よりもノンノでの掲載が早い。

 続いて、1978年に出版された製菓事業者向けの雑誌『製菓製パン 44』(全日本菓業新聞連盟加盟誌)には、ミルクレープという言葉が登場しないが、ミルクレープにそっくりなケーキが紹介されている。

 そして1981年6月に出版された『主婦と生活』(主婦と生活社)のなかでは、「ミルクレープ」という名前で、ミルクレープの写真とレシピが紹介されている。ここで紹介されているミルクレープは、現在のミルクレープとほぼ同じレシピ、形である。

 またミルクレープをはじめとするボリューミーなケーキで有名なHARBS(ハーブス)は、『ハーブスと私ーHARBS誕生物語』(山田 幸枝)によると1982年にミルクレープを販売している。同書によると、ハーブスの創業に携わった著者の山田幸枝さんは、1982年に東京にケーキの視察に訪れた際に食べたミルクレープに感銘を受けて、ハーブスでも出したいと思ったそうだ。つまり1982年には東京にミルクレープを提供する店があったということになる。そして同じ年にハーブスもミルクレープを販売しているのである。

ミルクレープを有名にしたドトール

 ミルクレープを定番のケーキに格上げしたのはドトールコーヒーなのではないだろうか。

ドトール ミルクレープ の写真 (3)
ドトールのミルクレープ

 1996年にドトールが販売したミルクレープは、現在でも人気の商品である。ジャーマンドック、ミラノサンドと並んで、ドトールの看板商品として紹介されるケーキだ。ドトールは、機械化が可能なミルクレープを、職人が手作りしており、絶妙な薄さでクレープを焼くことで人気の味を生み出しているという。ドトールが全国の店舗で販売を開始したことで、ミルクレープは日本の定番ケーキの1つになったと筆者は推察している。

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【ミルクレープの特殊性】なぜチェーン店でしか見かけないのか?

 ミルクレープは手近にあるスイーツになった。一方でミルクレープを見かけるのは、ケーキ屋であれカフェであれ、チェーン店ばかりだ。個人経営のカフェやケーキ屋ではあまりみかけない。いったいなぜ、ミルクレープは個人店ではあまりみかけないのだろうか。その理由はミルクレープにかかる手間と、ミルクレープの希少性の低さにあると筆者は考えている。

ミルクレープは手間がかかる

 ミルクレープの構成要素はクレープ生地とホイップクリームというシンプルなものだし、レシピも想像しやすい。パティスリーと呼ばれるケーキ屋でみかける、読み方がわからないケーキのような難解さや複雑さは感じられない。ゆえにミルクレープにはそれほどありがたみを感じることはないかもしれない。

コージーコーナーのミルクレープ
コージーコーナーのミルクレープ

 しかしそのシンプルな見た目に反して、ミルクレープは非常に手間がかかる。クレープ生地を大量に作って、その間にホイップクリームを挟み層にしていけばいいだけなのだが、これがそう簡単ではない。

 客に販売できる大きさのミルクレープを作るにはまずクレープ生地を焼くための大きな鉄板が必要だ。家庭用のホットプレートでは大きさが足りないので、クレープ屋がもっているような大きな鉄板が必要だろう。

 そして厚み、面積が均一のクレープ生地を大量に焼かなければいけない。たとえレシピがわかっていても、大量のクレープ生地を均一の大きさで作れる技術と自信と体力と時間がある個人店は多くはないだろう。

手間と技術を必要とするため、一日数個しか作ることができず幻のスイーツと呼ばれた

 ミルクレープ専門店のカサネオは公式サイトで、ミルクレープについて上記のように記載しているが、そう呼ばれる理由もわかる。

ミルクレープは手間がかかるのに希少性が低い

 これまで説明してきたように、ミルクレープは非常に手間がかかるケーキだ。それにもかかわらず、コンビニやスーパーでも売っているありふれたケーキである。フランス語を使った難解な商品名のパティスリーのケーキに比べるとありがたみは劣るといわざるをえない。

 ミルクレープは根強い人気があるのでコンビニやスーパー、ドトール、ベローチェ、不二家、コージーコーナーなど大手のチェーン店がよく販売している。一方で、個人経営のカフェや洋菓子屋ではほとんど見られない。それは個人店で作るにはあまりにコスパが悪いからだろう。

 簡潔にいえば、ミルクレープは手間がかかるのに希少性が低いのだ。普通、手間がかかる面倒なものは、希少性が高くなるものだが、ミルクレープは逆だ。手間がかかるのに、希少性が低い。手間がかかるのに、ありふれているのだ。ミルクレープはそんな特殊性をもったケーキなのだ。ミルクレープがそのような特殊性を帯びたケーキになったのは、ヒットのきっかけを作ったのが、全国チェーンの格安カフェ「ドトール」であり、「ミルクレープはチェーン店で食べるもの」という観念がついてしまったのかもしれない。

お店のミルクレープまとめ

 最後にお店のミルクレープをまとめて紹介していく。「ミルクレープなんてどこも同じ」と思っている方もいるかもしれないが、当然のことながら、各社様々であり、写真をみるだけでも、各社の違いがわかるのではないだろうか。

YATSUDOKI(ヤツドキ)のミルクレープの写真 (6)
YATSUDOKI(やつどき)
コージーコーナーのミルクレープ
コージーコーナー
CASANEO カサネオ ミルクレープ はじまり (1)_R
casaneo(カサネオ)
ドトール ミルクレープ の写真 (3)
ドトール
ミルクレープ
ベローチェ

他にもミルクレープを販売している店はたくさんある。以下のページでまとめているので、ぜひご覧いただきたい。

その他、参考資料

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ライター・管理者
かなざわ

洋菓子屋やカフェ、レストラン、コンビニのチーズケーキを食べ歩き、チーズケーキを研究しています。現在はフリーのライターです。このブログは個人で運営しているものです。

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