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チーズケーキ研究

カッサータとは何か? その歴史と特徴、日本と海外のカッサータの違いについて

チーズケーキ研究

2021年3月2日、大手コンビニのローソンはドライフルーツとナッツのカッサータを冷凍で販売。冷凍ままでも、解凍してもら食べられる便利さと美味しさで人気を呼んだ。

その約7ヶ月後の2021年10月28日には、セブンイレブンがカッサータを販売した。しかもこちらは冷凍ではなく冷蔵である。300円近いやや高めの価格設定であるにもかかわらず、人気を呼び、ネットメディアはこぞって食レポを掲載した。

このカッサータとは何だろう。カッサータは、イタリア・シチリア発祥のリコッタチーズを使ったチーズケーキの一種である。では他にどんな特徴があり、どんな歴史があるのだろうか。それをこのブログで掘り下げてみることにした。

すると意外な事実がわかった。なんと本場のカッサータと日本のカッサータは少し違うのである。

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日本には数十年前から知られているスイーツ

カッサータはイタリア、シチリア発祥のスイーツで「カッサータシチリアーナ」と呼ばれることもある。1990年に出版された『洋菓子百科事典』(同朋舎出版)では、「カッサータ・アッラ・シチリアーナ」という名前で紹介されており、この時すでに洋菓子として日本に紹介されていたようである。

カッサータは基本的にリコットチーズとドライフルーツを使って作るレアチーズケーキである。後で詳しく解説するが、実はこのカッサータは海外のものとは少し違う。

日本式カッサータは2003年、すでにクックパッドでそのレシピが紹介されている。またSNSの情報をさかのぼってみても、2013年にはすでにレストランやカフェなどで食べられていたようである。2000年から2020年の間でも『Hanako』や『オレンジページ』『aruco』『ELLE』などの有名雑誌や、個々のレシピ本でもカッサータがたびたび紹介されている。カッサータは、メジャーではないが、日本でも普通に食べられているスイーツの1つとして存在しているのである。一方でここ最近、急に注目されるようになった。

カッサータが話題になったのは、おそらく2021年4月にローソンが冷凍のカッサータを販売した時からだろう。ローソンが冷凍のティラミスやアップルパイと一緒に冷凍のカッサータを販売し、これが美味しいということで、少し話題になった。

ローソンの「ドライフルーツとナッツのカッサータ」
※ローソンのドライフルーツとナッツのカッサータ

ちなみにタリーズコーヒーは少し早い2021年3月2日に、ソイミルクを使ったアイスのカッサータを販売している。

タリーズコーヒー ソイミルクのカッサータ
※タリーズコーヒーのソイミルクのカッサータ

本格的に注目されるようになったのは2021年10月下旬にセブンイレブンが商品化したことがきっかけだろう。セブンイレブンは冷凍ではなく、冷蔵でカッサータを販売。売り切れる店舗が出るほどの人気で、ネットメディアはこぞって食レポの記事を公開した。

※セブンイレブンのカッサータ
※セブンイレブンのカッサータ

ドライフルーツとナッツがたっぷり入ったこのレアチーズケーキはどこかで食べたことがるような、ないような、そんな親近感がある。しかし一方で目新しさもある。親近感と新しさ、このような相反する要素を持ち合わせていることが人気を呼んだのだろう。

それにしてもなぜ急にコンビニが商品化したのか。その具体的な理由はわからないが、マリトッツォのブームも落ち着いてきて、ポストマリトッツォを探していたときに、ちょうどカッサータを見つけたのだろう。そもそもカッサータはマリトッツォと同じイタリア発祥の食べ物である。どこかで食べたことがあるような親近感もありつつ、目新しさもあって、そして海外のスイーツであるという過去にトレンドになったフードの条件を持っている。次なるブームを狙ってコンビニは商品化に走ったのではないだろうか。

日本で急に話題になったカッサータであるが、いつ頃から人類はこれを食べているのであろうか。続いてはその歴史を掘り下げていく。

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【カッサータの歴史】原型は10世紀頃のクワッサットゥに

カッサータは、別名「カッサータシチリアーナ(cassata siciliana)」という。

日本のカッサータと海外のカッサータは若干違っている。この違いについてはあとで詳しく説明するが、基本的にイタリアでみられるカッサータはドーム型で、シロップを塗ったスポンジとマジパンに、チョコチップなどを混ぜたリコッタクリームを使い、表面に砂糖漬けのフルーツを飾るケーキである。

以下は英語版のWikipediaのcassata siciliana(カッサータシチリアーナ)のページに掲載されていたカッサータの写真である。

Dedda71, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, ウィキメディア・コモンズ経由で
Wikipedia- Sicilian cassata, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4740225&uselang=ja, Dedda71, CC BY-SA 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

InstagramやYoutubeで調べてみても、同じようなカッサータの写真が紹介されている。海外でカッサータといえば、上記のようなケーキをいうのである。

さて、その歴史はどんなものか。まず『イタリア菓子図鑑』(佐藤 礼子、誠文堂新光社)では、カッサータは次のように紹介されている。

1575年には西海岸のマッザー ラデルヴァッロの修道院で復活祭期間の菓子として作られていたという記述が残されており、今 ではシチリアの復活祭に欠かせないものになっている。

カッサータの原型は、10世紀のアラブ統治下のパレルモで生まれた、リコッタにはちみつを混ぜ、ボウルで保存した食べ物である「クワッサットゥ」にあるという。その後、王宮に仕えるシェフが2枚の生地にクワッサットゥを挟んで焼いたのが、最初のカッサータである。カッサータといえば冷製ケーキというイメージであるが、もともとは焼くケーキだったようだ。

現在でもこの焼くタイプのカッサータは「カッサータアルフォルノ(cassata al forno)」という名前でシチリアに残っている。「cassata al forno」で検索すればレシピも調べられる。こちらも美味しそうだ。

※以下の動画は「cassata al forno」のレシピ。日本のカッサータとはかなり違う

冷製のカッサータは、南イタリアがノルマン人の支配下であった11世紀頃に生まれた。この時ちょうどマジパンが作られはじめたこともあり、カッサータにもマジパンが使われた。パンのような生地に前述のクワッサットゥを挟み、それをマジパンで巻いたような、現在のものに近いカッサータが修道院で作られるようになった。

その後、イタリア南部がスペイン支配下のときには、リコッタクリームにチョコレートが入り(本場のカッサータはリコッタチーズにチョコレートを混ぜる)、またフルーツの砂糖煮が飾られるようになった。カッサータのレシピが文章として登場するのは19世紀になってからであるが、1575年には修道院にて復活祭の時に食べられていたという記述が残されているという。

カッサータの原型であるクワッサットゥは、チーズにはちみつを混ぜただけのものなので、これをチーズケーキと呼ぶかは微妙である。一方でその後に作られた焼いたカッサータであるカッサータアルフォルノや、マジパンを使った冷製カッサータは、チーズを使ったケーキなので、チーズケーキといえるだろう。かなり昔から存在しているチーズケーキの1つであることは間違いない。

残念ながら日本で本場のカッサータを食べられる店はなさそうだ。ただしネットを使えば本場のカッサータのレシピを調べることができる。何度か紹介している『イタリア菓子図鑑』(佐藤 礼子、誠文堂新光社)にも掲載されている。はるか昔から存在するチーズケーキを堪能したい方はぜひ調べてみてほしい。

本場のカッサータは日本とは違う

前述のとおり、日本のカッサータと海外のカッサータはかなり違っている。この違いについて少し考察したい。

まず以下は海外でみられるカッサータである。

様々なチーズケーキのレシピを紹介している『カオリーヌ菓子店のチーズケーキ』(かのうかおり、主婦と生活社)では、日本のカッサータと本場シチリアのカッサータが違っており、本場のものはドーム状で、ケーキの上にはフルーツの砂糖煮を放射状に飾るのが基本であると述べている。違いを述べた上で同書は、日本でみられるドライフルーツを使ったカッサータのレシピを紹介している。

Instagramで#cassatasicilianaを検索してみると、日本のものとは全然違うカッサータの写真ばかりが現れる。形は円が基本で、フルーツを放射状に盛り付けているものが多い。そしてもう1つ欠かせない特徴としてみられるのが、緑色を入れることである。緑色のマジパンを使ったり、緑色の果物をのせたり、緑色の取り入れ方はそれぞれであるが、ほぼ必ずといっていいほど、緑色が入っている。緑を入れる理由は本でもネットでも見つからなかったが、カッサータは復活祭に食べられるケーキであることから、宗教的な意味がある色として使われていると察する。

日本でカッサータといえば、リコッタチーズ、あるいはクリームチーズにドライフルーツとナッツを生地に混ぜて、冷やしたスイーツである。

セブンイレブン(山崎製パン)カッサータ (4)
セブンイレブンのカッサータ

雑誌、レシピ本、ネットなどでカッサータのレシピについて一通り調べてみたが、本場のカッサータの具体的なレシピを写真つきで紹介しているのは、『イタリア菓子図鑑』(佐藤 礼子、誠文堂新光社)のみであった。

日本のカッサータは、どちらかといえばフランス菓子のヌガー・グラッセに近い。ヌガー・グラッセは生クリームとメレンゲにドライフーツやナッツを使う冷菓であるが、外見は日本版カッサータとほぼ同じである。

いつ、どこで日本のカッサータは変わってしまったのだろうか。それは現地点ではわからない。他方で、本場のカッサータはめちゃくちゃ甘いと書いている本をいくつかみつけた。たとえば『世界の郷土菓子』(林周作、河出書房新社)では、「胸が焼けるくらいの甘さ」と書いており、『旅のモザイク』(澁澤龍彦、河出書房新社)では「おそろしく甘いジェラート・カッサータ(シチリア風の果物の入りアイスクリーム)」と書いている。他にもイタリアのカッサータを「甘い」と紹介している本はいくつかあった。

日本の味覚をもった人たちが「甘い」と表現するなら、やはり甘いのだろう。そのめちゃくちゃ甘いカッサータを、そのまま日本に持ってくるのは無理がありそうだ。日本人の舌に合うように、ヌガー・グラッセ風にアレンジした人がどこかにいるのだろう。

日本では、西アジアや南ヨーロッパあたりでみられる、シロップ漬けにした激甘のスイーツはほとんどみられない。そもそも日本人の舌に合わないからだろう。カッサータを日本に紹介した人は、本場のカッサータを日本人でも食べやすいように、そして作りやすいように、アレンジしたのではないだろうか。現在、日本でみられるカッサータが、どこかで食べたことがあるような親近感がある味、食感なのも、それで合点がいく。

おわりに

カッサータを調べていて驚いたのは、日本でみられるカッサータと、本場のカッサータが大きく違っていたことだ。しかも本場のカッサータにおいて重要だと思われる、ドーム型であることと、緑色を使っていることの2つ要素が完全に抜け落ちたものが、日本で一般化していた。

この事実を知ったとき、正直、あまり良い感想を持たなかった。イタリア菓子文化の都合のいい部分だけ受け入れたものだと、斜に構えた感想を一瞬抱いた。しかし一方で、日本風にアレンジされたカッサータからは「海外のスイーツをどうにか日本で普及させたい」という考案者の熱い思いも感じた。

誰が最初に日本式カッサータを普及をさせたのかはわからない。しかしその最初の人がカッサータを日本に紹介してくれたおかげで、遠く離れたイタリア・シチリアの菓子文化に触れることができた。本場のカッサータがどんな歴史を持ち、どんな材料を使い、どんな時に食べられるものなのかを知ることができた。異文化に触れる貴重な機会を得られたという意味では、カッサータを日本人の好みに合うようにアレンジした人、そしてこの日本式カッサータのレシピを紹介したり、商品として販売したりして広めた人には、感謝するばかりである。

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