チーズケーキのレシピは小麦粉(薄力粉)が入っているものが多いが、薄力粉がなくてもチーズケーキは作れる。
薄力粉あり・なし。どちらがいいのだろうか?
薄力粉を入れる場合と入れない場合で、チーズケーキはどう変わるのか? 実験してみた。
結果の要約は以下の通り。
- 薄力粉なしでもチーズケーキは作れる
- ただし、薄力粉がないと形が安定しない。薄力粉なしで作る場合は材料の分量に要注意
- 薄力粉なしの方がクリーム状に近い状態で、生地はもろくなるが、味は濃くなる
▼味や質感の違い
薄力粉あり | 薄力粉なし | |
---|---|---|
味 | 薄力粉を入れると味が若干薄くなる | 濃厚になる |
質感 | むっちりした質感に。またパンのような質感も若干ある | クリーミーさがある一方で、水っぽさもある |
食感 | ねっとり感があり、食べごたえがある | しっとり感があって口どけが良い。レアやバスクチーズケーキに近い |
形 | ガッチリ固まるので、形が崩れない。他の材料が増えても失敗しにくいと思われる | 柔らかく不安定で、崩れやすい。分量に気をつけないと失敗しそう |

そもそも、なぜチーズケーキに小麦粉(薄力粉)を入れるのか?
レシピ本では、「小麦粉はつなぎの役割をします」と書いてある。では、「つなぎ」とは具体的にどういった役割なのか?
レシピ本による、「小麦粉を入れることによって生地にまとまりがでる」らしい。
小麦粉に水分が加わると、グルテンというたんぱく質が形成される。このグルテンが生地をつなぎあわせ、形を保つ役割をする。
チーズケーキに使用する材料であるクリームチーズや生クリーム、卵、砂糖などの材料は、薄力粉によってつながれ、ケーキの形を維持できるというわけだ。もちろん薄力粉だけでなく、卵の力も借りてではあるが。
今回使用したレシピ
さて、ここかからは薄力粉あり・なしのチーズケーキ実験の結果を紹介する。
まず、レシピはフィラデルフィアがネットで公開しているものを参考にした。材料がシンプルで、薄力粉による違いがわかりやすそうだからだ。

ベースのレシピは以下の通り。
クリームチーズ 200g
砂糖60g
卵2個
生クリーム150ml
レモン汁大さじ1
薄力粉25g
薄力粉を入れることを前提にしたレシピだ。
このレシピの分量を半分にして、片方に薄力粉を入れ、もう片方には薄力粉を入れない。
これで2つのパターンのチーズケーキを作る。具体的には以下の通り。
薄力粉ありのレシピ | 薄力粉なしのレシピ |
---|---|
クリームチーズ100g 砂糖30g 卵1分 生クリーム75ml レモン汁7g 薄力粉6g | クリームチーズ100g 砂糖30g 卵1分 森生クリーム75ml レモン汁7g |
これで薄力粉の有無による、味や質感の違いを比較できるようになる。
今回は以下の画像のように、耐熱容器にクッキングシートを敷き、生地を流し込んだ。

焼く前は、ほとんど違いはわからない。写真だとわかりにくいが、薄力粉を入れた方が、生地の量は多くなった。
焼き上がり直後の比較
さて以下の写真は焼き上がり直後。左が薄力粉あり、右が薄力粉なし。(今後も2つ並べるときは、左に薄力粉あり、右に薄力粉なしを置く)

薄力粉あり 薄力粉なし
今回は普通に焼いたのみ。(湯煎焼きなどはしていない)
どちらもオーブンから出した直後はふくらんでいた。とくに薄力粉を入れた方が大きくふくらみ、表面の割れ具合も大きかった。
また薄力粉ありのほうには、パンのような質感があった。
8時間冷やしたあとの質感の比較
一晩(8時間ほど)冷蔵庫で冷やした状態がこちら。
左が薄力粉あり、右が薄力粉なし。





クッキングシートをはがすとき、薄力粉なしのほうがベチョベチョしていた。余分な水分が漏れ出していたと思われる。
ただしぱっと見ただけでは、その違いはわからない。
また予想に反して、薄力粉なしのチーズケーキもしっかり成型できている。
断面の比較
さて続いて断面の比較をする。断面に関しても、正直、ぱっとみただけでは違いはわからない。


よく見ると、薄力粉なしのほうが、水っぽくて、クリームのような質感になっているのがわかると思う。
またお皿に注目してみると、薄力粉なしのほうが、ボロボロ崩れている部分が多い。これはつまり、つなぎとなる薄力粉がなく、生地がもろくなっているということだ。
薄力粉あり 薄力粉なし
薄力粉あり 薄力粉なし
味や食感の比較

薄力粉なしはレアのようなしっとりした食感になった
薄力粉なしのほうは、レアのような、しっとりした舌触りになる。バスクチーズケーキにも近いかもしれない。
ただし今回はうまくいっただけで、材料の全体の水分量がこれ以上多いと、ベチョベチョした舌触りの悪いチーズケーキになりそうだ。それくらいギリギリ形を保てている様子が、食べていて伝わった。
もし薄力粉なしでチーズケーキを作るのなら、水分量には注意する必要があるだろう。
一方で薄力粉ありのほうは、まったく水っぽさがなく、しっかり固まっている。弾力のあるねっとり、もっちりした質感になり、ねっとりしたチーズケーキが好きという方には薄力粉ありがおすすめだ。
薄力粉がないほうが濃厚になる
薄力粉を入れたほうは味が薄まっている。薄力粉によって体積が増えるからだろうか。もちろん美味しいのだが、薄力粉なしに比べると、若干味気ない。
一方で薄力粉がないほうは、しっかりクリームチーズの味を感じられる。薄力粉で薄まらない分、味は濃くなるのかもしれない。
まとめ:チーズケーキは薄力粉なしでも作れるけど注意が必要
以上、チーズケーキに薄力粉を入れる場合と入れない場合を比較してきた。
違いを整理すると以下の通りになる。
薄力粉あり | 薄力粉なし | |
---|---|---|
味 | 薄力粉なしに比べると薄い | 濃厚になる |
質感 | むっちりした質感に。またパンのような質感が若干みられる | クリーミーさがある一方で、水っぽさもある |
食感 | ねっとり感があり、食べごたえがある | しっとり感があって口どけが良い。レアやバスクチーズケーキに近い |
形 | ガッチリ固まるので、形が崩れないし、失敗しにくいと思われる | 柔らかく不安定で、崩れやすい。分量に気をつけないと失敗しそう |
まず見てきたように、チーズケーキは薄力粉がなくても作れる。今回のレシピでは薄力粉がなくても卵の凝固力だけで成形できたし、自立するくらいの弾力も得られた。
ただし、注意も必要だ。今回のレシピから少しでも生クリームの量を増やしたり、ヨーグルトを混ぜたり、水分が多い材料が増えると、恐らく固まらなくなってしまうだろう。また砂糖には卵の凝固力を弱める性質があるで、砂糖の量にも注意が必要だ。
薄力粉を使っているレシピから、そのまま薄力粉を省力してしまうと、失敗する可能性がある。薄力粉を使わない場合は、薄力粉なしのレシピを探すことをおすすめしたい。