今回紹介するのは東急東横線・学芸大学駅にある老舗の洋菓子屋「マッターホーン(Matterhorn)」です。
お店の特徴や歴史とともにレアチーズとダミエの2つのケーキを紹介します。
マッターホーンについて
マッターホーンは学芸大学駅から徒歩3分ほどの場所にあります。
学芸大学は東急東横線の駅の1つで、目黒区にあります。学芸大学は、「ねとらぼ」が調査した東急東横線沿線で住みたい駅のランキングで、2021年に1位になった駅です(「東急東横線」あなたが住みたい駅ランキングTOP13! 第1位は「学芸大学駅」に決定!【2021年投票結果】- ねとらぼ)。
商店街が多く、おしゃれな個人系のカフェやレストラン、バルが多くあり、休日にはおしゃれな人が集う、なにかとファッショナブルな雰囲気のある街です。おしゃれなチーズケーキ専門店として知られる「A WORKS」も、学芸大学の近くにあります(A WORKSの紹介はこちら)。
マッターホーンもそんな学芸大学の街にあります。他方、マッターホーンができたのは、学芸大学におしゃれなイメージが定着する前の、まだまだ学芸大学という呼び名すら定着していない時代です。
マッターホーンが創業したのは1952年です。ちょうど第一師範駅から学芸大学駅という駅名に改称したのと同じ年です。マッターホーンは、まさに学芸大学駅とともに歴史を歩んできた洋菓子屋なわけです。
店舗は学芸大学に一店舗のみ。ウェブマガジンの「FASHOSNAP.COM」では「一店舗主義を貫いている」と紹介されており、増やせるけど、あえて増やさないというスタンスをとっているようです。
紙袋や包装紙が人気
マッターホーンを調べてみると、いくつかのメディアが、ケーキの箱や包装紙のデザインがかわいいと紹介しています(老舗レトロな東京みやげ「マッターホーン」、FASHOSNAP.COM)。SNSでも、パッケージデザインに言及した投稿がいくつか見受けられました。
この包装紙のデザインは、画家の鈴木信太郎氏(1895年8月16日~1989年5月13日)が手掛けています。同氏は他にも、西荻窪にあるフレンチと洋菓子の店「こけし屋」の紙袋やコースターのデザインや、本のカバーデザインも手掛けています。西荻窪のこけし屋が創業したのは1949年で、マッターホーンと同じ時期です。店の紙袋や箱のデザインを鈴木信太郎氏に依頼することは、よくあることだったのでしょうか。いずれにしてもレトロで風情があるイラストです。
店の特徴とラインナップ、人気商品
マッターホーンには、生菓子から焼き菓子まで、総合的に洋菓子を販売しています。老舗というだけあり、モザイクケーキと呼ばれるレトロな雰囲気の生菓子もあります。
焼き菓子にはあのデザインも。

特に人気なのはバウムクーヘンで、多くのウェブメディアでも紹介されています。2012年の『はなまるマーケット』でも紹介されたそうです。今回は購入していませんが、独特の薄さでカットしたバウムクーヘンは、なんともいえない口どけを味わえるといいます。
ちなみにマッターホーンは、製菓材料の販売店としてフォンテーヌも運営しており、洋菓子製造用のチョコレートや香料やスパイスなどを販売しています。洋菓子屋が製菓材料の販売をする例は、最近では見かけることはありません。今ではネットを使えばほぼどんな材料でも素人が入手することができますが、ネットがない時代は、ちょっと凝った製菓用材料が欲しい場合、マッターホーンのように材料販売も手掛けている洋菓子屋から買うしかなかったのではないかと推察しています。
レアチーズ
さてここかはらマッターホーンのチーズケーキを紹介します。今回マッターホーンで購入したのがこちらのレアチーズです。
表面は白く、中間には赤色のソースと薄いスポンジ生地があります。ケーキの外側にも、スポンジの装飾を施してあります。
お店のメニュー表によると「フランボワーズソースがポイントの国産チーズを使用した定番のレアチーズケーキです」とのこと。定番のレアチーズといっても、一般的なレアチーズケーキに比べると、だいぶ手間がかかっているように見えます。
またお気づきの方もいると思いますが、どこかショートケーキを思わせる外見をしています。何も言われなければ、ショートケーキだと思って食べてしまいそうなほどです。
チーズケーキは基本的に混ぜるだけのケーキなので、地味な見た目になりがちなのですが、こちらはショートケーキのような華やかさと特別感があり、地味さを克服しています。これによりチーズケーキであるにもかかわらず、ショートケーキのような特別感のあるケーキを食べられます。ショートケーキが苦手な人にも食べてもらえるように、このように華やかなレアチーズケーキを置いているのではないかと、勝手に推察しています。

口に入れてまず感じるのは、フレッシュチーズのやわらかくて控えめな酸味、次にスポンジのふわっとした質感と優しい甘さ、生クリームの乳味と甘さなどが舞い上がります。全体的に優しい印象ですが、フランボワーズのフルーティーな酸味がアクセントになっており、このフランボワーズによって味が単調になるのを防ぎ、食べていて飽きないケーキに仕上がっているのではないかと思います。
マッターホーンのチーズケーキは、2018年以降に流行している口どけがよく、濃厚でどっしりパンチが効いたチーズケーキとは、まったく別のタイプです。いうなれば昔からあるような、優しくて素朴な味わいです。最近の濃厚系のチーズケーキに慣れている人だと物足りなさを感じるかもしれません。
一方で、「こういうチーズケーキを求めていた」と感じる人もいるはず。チーズ感はほどほどに、ケーキのふわふわ感や生クリームの柔らやわらか味やナチャラルチーズケーしい酸味などを、どれもほどよく感じられる、謙虚さ、優しさがありました。
ダミエ
今回はもう一つ、ダミエというケーキを購入しました。創業当時からある、店を代表するケーキとのことです。こちらチーズケーキではありません。

モザイク状になっていることから、このようなケーキはモザイクケーキと呼ばれることがあります。銀座ウエストのような老舗の洋菓子屋でみられるケーキであることから、レトロケーキとしてとらえられることもあります。
構造はシンプルで、スポンジとその間にバタークリームをぬり、チョコレートでコーティングしています。スポンジ、バタークリーム、チョコレートというシンプルな材料でありますが、それらをモザイク状に仕上げるのは、手間のかかる作業だと察します。

味や食感もシンプルです。ふわふわのスポンジ生地に、しっとりしたバタークリームが合わさる、どこかで食べたことがあるような、組み合わせの食感です。味は、チョコレートにバターの風味とスポンジのやわらかい甘味が加わります。バタークリームを使用しているとのことだったので、やや重たい感じがあるのかと思っていましたが、まったくそんなことはなく、軽めの印象のケーキです。
このようなモザイクケーキを食べるのは初めてだったのですが、どこか懐かしい感じがしました。スポンジ、バタークリーム、チョコレートの組み合わせのケーキや菓子は、平成前後くらいまでは、おそらく、定番の組み合わせとして、あらゆる場所に存在していたように思います。現在は絶滅危惧種であるタヌキケーキも、バタークリームとチョコレートの組み合わせでした。平成元年生まれの私は、その組み合わせのケーキ、あるいはお菓子をどこかで食べていたのかもしれません。
ちなみにこのダミエは、ホールでの販売も行っており、ホールの場合は取り寄せもできるようです。詳しくは公式サイトをご覧いただければと思います(公式サイト)。