チーズを使ったスイーツの1つに「クレメ・ダンジュー」と呼ばれるものがあります。ガーゼに包まれた純白のスイーツで、ベリーソースのトッピングがあったり、あるいは中にベリーソースが入っていたりします。
コンビニやスーパーなどで時々見るけどなんだかよくわからないこの「クレメ・ダンジュー」。本記事ではその名前の由来や歴史、レシピの特徴、似た名前の「クレーム・ダンジュ」「クレーム・アンジュ」について徹底的に解説していきます。
まず要点をまとめると以下のとおりになります。
- フレッシュチーズとメレンゲ、生クリームなどを混ぜて水切りして作るレアチーズスイーツ
- ベリーソースのトッピングがあったり、中にベリージャムを入れている場合も
- 1900年頃にフランスのアンジュ地方で生まれたフランスの伝統菓子
- クレーム・ダンジュ、クレメ・ダンジュ、クレーム・アンジュなど色々あるが、基本的にはどれもほぼ同じ食べ物
【▼目次】
- 【特徴】フレッシュチーズとメレンゲを混ぜて、水気を切ったレアチーズスイーツ
- 【名前について】「クレーム・ダンジュ」「クレメダンジュ」「クレーム・アンジュ」
- 【歴史】1900年頃にフランスのアンジュ地方で生まれた
- クレーム・ダンジュが買える店・食べられる店
【特徴】フレッシュチーズとメレンゲを混ぜて、水気を切ったレアチーズスイーツ
クレメ・ダンジュー(Crémet d’Anjou)は上記画像のようなスイーツです。フロマージュブランというフレッシュチーズをベースに、生クリームやメレンゲなどを混ぜ合わせ、水分を抜いて作ります。ただし厳密なレシピはなく、クリームチーズやカッテージチーズ、ヨーグルトが使われる場合もあります。 コンビニやスーパーで、レストランで提供されるクレームダンジュは、クリームの中にベリーソースが入っている場合がほとんどです。
後述しますが、ベリーソースを入れるパターンは、クレーム・ダンジュに類似した菓子であるクレーム・アンジュを参考にしているからであると考えられます。
焼かないチーズケーキという意味ではレアチーズケーキの一種だといえます。日本でもレシピは一般的に広まっていて、すでにクラシルにもあります。
【クレームダンジュのレシピ】
【味の特徴】ふんわりした舌触りと乳製品の乳味を楽しむスイーツ
フレッシュチーズという熟成させないタイプのチーズを使用するので、臭みやクセもなく、塩味もほぼありません。やんわり感じられる酸味とフレッシュチーズや生クリームの乳味が味の主役となります。また一般的なレアチーズケーキよりはふわふわした食感を楽しめるのも特徴の1つです。
【名前について】「クレーム・ダンジュ」「クレメダンジュ」「クレーム・アンジュ」
冒頭では「クレーム・ダンジュ」という呼び方をしましたが、ほぼ同じスイーツが、「クレメ・ダンジュ」や「クレーム・アンジュ」といったという名前で売られていることがあります。いったい何が違うのでしょうか。要点は以下の2点です。
- 作り手によって呼び方が異なるが、日本においては基本的にどれも同じ食べ物を指す
- どれもフランス語である
4つ呼び方が確認できる
まず筆者が確認できた呼び方のバリエーションは以下の4つです。
- クレメ・ダンジュー(crémet d’anjou)
- クレメ・ダンジュ(crémet d’anjou)
- クレーム・ダンジュ(crème d’ange)
- クレーム・アンジュ(crème anjou)
それぞれの単語の意味は以下の通り。
- crémet|「クレメ」と発音。クリームやチーズを使ったデザートを指すとのこと。
- d’anjou|「ダンジュー」と発音するが、ダンジュと書かれる場合も。「アンジュ地方の」の意味。anjouはアンジュ地方、d’は deの語尾省略
- crème|「クレーム」と発音。「クリーム」のこと。
- d’ange|「天使の」の意味。angeは「天使」のこと、d’は deの語尾省略
その他、「Crémet d’Angers(クレメ・ダンジェ)」という言葉も存在するそうですが、日本では一般的ではありません。4つの呼び方について、簡単に解説を入れます。
1、クレメ・ダンジュー(crémet d’anjou)と2、クレメ・ダンジュ(crémet d’anjou)について
後に詳しく解説しますが、クレメ・ダンジューは「アンジュ地方」で生まれたクリーム状の菓子であるため「クレメ・ダンジュー(crémet d’anjou)」と呼ばれています。日本で一般的に見られるのは「crémet d’anjou」のスペルを表記し「クレメ・ダンジュー」もしくは「クレメ・ダンジュ」と表記するパターンです。
フランス語のwikipedeiadでは「crémet d’anjou」でタイトルが設定されています(Crémet d’Anjou — Wikipédia)。フランスでもこの表記が一般的なのかもしれません。
日本では中にベリーソースを入れたものが一般的ですが、フランスのWikipediaによれば、フランスではベリーソースは中に入れるのでは、脇に添えるパターンがあるようです。またハート型のクレメダンジュー型というものが存在しており、それで作るのが一般的とも。
3、クレーム・アンジュ(crème anjou)について
もう1つ日本でよく見られるのは、クレーム・アンジュ(crème anjou)です。これも基本的は同じようなスイーツなのですが、ルーツが違います。これは麹町にあるパティシエシマという洋菓子屋のシェフである、島田進さんがパリで修行中に、まかないで食べたフロマージュブラン(チーズの一種)を日本で広めるために作ったお菓子だとされています(フランス菓子の殿堂、麹町の情熱的パティスリー<パティシエ・シマ>。クレームアンジュなど代表作をご紹介。FOODIE(フーディー) 。クレーム・アンジュはフロマージュブランをベースに使ったクリームの中に、フランボワーズソースを仕込みませたスポンジケーキを入れた菓子です。本来のクレーム・ダンジュは、スポンジケーキは入っていません。
4、クレーム・アンジュ(crème d’ange)について
また「crème d’ange」のように、「天使」という言葉が入るパターンがあります。日本でも、海外でもこの表記がいくつか見られました。
angeという言葉がつくようになった理由について、はっきりした理由は調べてもわかりませんでしたが、「anjou(アンジュ地方)」を「天使」を意味する「ange(アンジュ)」という言葉にかけて呼ぶようになったものだと考えられます。
【歴史】1900年頃にフランスのアンジュ地方で生まれた
『お菓子の由来物語』によるとクレメダンジュは、1900年頃にフランスのアンジュ地方で生まれたスイーツであり、もともとはフレッシュチーズではなく生クリームと卵で作っていたとされています。
1900年頃、 酪農家がハバット(パターを作る機械=撹拌機)を使いクリームをこねる過程で、機械のプロペラやまわりに付着した クリームをかき集め、ソースをかけてデザートとして食べたのがはじまりだとされる。現在は、フロマージブランというチーズを使うのが一般的であるが、昔は生クリームと卵白のみで作っていた。1920〜30年代頃は「クレメダンジュ」 売りの少女がカゴに入れ、街で売っていたという。
お菓子の由来物語 猫井登
またフランスのアンジュ地方にある「Crêmetd’Anjou」という名前のレストランのWEBサイトでは、1890年に生まれたものであると紹介されています(参考:レストランのサイト)。
このクレメダンジュ(crémet d’Anjou)は、アンジュ生まれの美食評論家キュルノンスキー(Curnonsky)が、1921年に自身の著書のなかで「神々のごちそうだ( Le crémet angevin est un régal des dieux.)」と絶賛したという話も(参考:Wikipedia -Crémet d’Anjou)。
基本的に「crémet d’Anjou」と記載することが多いが「crémet d’Angers」と表記する例もあるそうです。『フランス伝統菓子図鑑』によると「Angers(アンジュ)」は都市名であり、「Anjou(アンジュー)」は旧地方名である。歴史的には「Crémet d’Anjou」のほうが古いと説明されている。
繰り返しになりますが、フランスのWikipediaによれば、フランスではベリーソースは中に入れるのでは、脇に添えるパターンがあるようです。またハート型のクレメダンジュー型というものが存在しており、それで作るのが一般的とも。
日本では1980年にすでに雑誌で紹介されている
日本では1980年4月24日発行の『女性自身』で早くも「クレメ・ダンジュ」の存在が確認できます。チーズケーキを特集したページで、渋谷にあるメゾン・ド・フランスの「クレメ・ダンジュ」が写真付きで紹介されています。
また2005年にはすでにネットでレシピが公開されていたことが確認できます。しかもそのサイトには「定番スイーツのひとつ、クレームダンジュ(クレメダンジュ)」と説明も。2005年時点ですでに定番のスイーツとして存在していたようです。
Twitterが一般的になりはじめた2013年頃には、すでに「クレームダンジュ」に関するツイートがたくさん見受けられました。
また2020年頃には成城石井が「クレームダンジュ あまおう苺ジャム入り」を販売。2022年1月にはセブンイレブンが「ふわれあ」という商品名でクレーム・ダンジュのような商品を販売。2022年5月にはローソンストア100が「クレーム・ダンジュ」という商品名でクレーム・ダンジュを販売しています。
「クレーム・ダンジュ」というそのとっつきにくい名前に反して、スーパー、コンビニでも販売されるポピュラーなスイーツの1つとなっています。
クレーム・ダンジュが買える店・食べられる店
【パティシエ・シマ】のCreme Anjou(クレーム・アンジュ)
こちらはネットでも取り寄せができるので、パティスリーのクレーム・ダンジュが食べてみたいという方はぜひ注文してみてほしいです。
・【パティシエ・シマ】クレーム・アンジュをお取り寄せ|麹町の名店が販売するフロマージュブランを使ったレアチーズケーキ(クレメ・ダンジュ、クレーム・ダンジュとも)
【チーズケーキガーデン】のクレーム・ダンジュ
※詳細解説はこちら
【CHEESE GARDEN】のチーズケーキまとめ|御用邸チーズケーキ、しらさぎ、チーズアソート、クレーム・ダンジュの食べた感想、お店の紹介
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