代々木上原にはスイーツで有名な店がいくつかありますが、特に有名なのが「アステリスク(ASTERISQUE)」です。今回はこちらのバスクチーズケーキとティラミスを紹介します。
バスクチーズケーキ(食べた感想)
まずはバスクチーズケーキです。
バスクチーズケーキは2018年頃から2020年頃まで日本でブームになり、現在はチーズケーキの一種として定着しました。フランスとスペインにまたがるバスク地方でみられるチーズケーキであることからその名前で呼ばれるようになりました。
これまでにない独創性あふれるバスクチーズケーキ
アステリスクのバスクチーズケーキはカップに入っています。生クリームのトッピングと、チーズを含ませたウエハースのようなものを添えています。
バスクチーズケーキはブームになったこともあり、今では多くの洋菓子屋、カフェ、レストランが販売しています。しかしどれもが同じような形、色です。
※以下は他店のバスクチーズケーキ
もちろん材料や焼き加減にそれぞれ工夫がみられますが、どこも似たようなバスクチーズケーキで、若干飽き飽きしていた部分もありました。
定番を守ること、基本を守ることももちろん大切です。基本ができていなければ独創的なアレンジはできません。ただ、バスクチーズケーキが定着してから2年ほど経つのに、どこも同じようなバスクチーズケーキばかりです。
そんな折、アステリスクのバスクチーズケーキに出会ったのですが、その形、味に度肝を抜かれました。先に掲載した写真のような定番のバスクチーズケーキをそのまま再現するのではなく、バスクチーズケーキをアステリスク風に解釈し、表現しているのです。いうなれば芸術の域にあるバスクチーズケーキです。
生クリームがめちゃくちゃ美味しい
さて、上のチーズ風味のウエハースは生クリームにつけても、そのまま食べても美味しいです。
またこの生クリームがとんでもなく美味しい。奥行きのある味とまろやかな口当たりで、「これが人気店の実力か…」と一口食べただけで感嘆してしまいました。
キャラメリゼによってバスク風の焦げを再現
そしてバスクチーズケーキ。表面からではわかりにくいのですが、キャラメリゼしてあり、ややザクッとした食感とほろ苦味があります。
一般的なバスクチーズケーキはオーブンによって高温で焼くことで焦げ目をつけます。一方でアステリスクはバーナーによるキャラメリゼによって焦げ目をつけているのです。
内と外の質感も違いもしっかり再現
チーズケーキは表面はねっとりしており、中に進むとカスタードクリームのような質感になっています。
非常にコクがあり、そしてチーズの味、美味しさをしっかりと感じることができます。チーズケーキは、あまりチーズの味を感じられないものも多くあります。それはそれでチーズケーキの魅力でもあるので悪いことではありません。他方、アステリスクのバスクチーズケーキは、チーズの味もしっかり感じることができ、まさに「チーズのスイーツ」という感じ。本当に美味しい。
基本をおさえつつ、新しさもある究極のバスクチーズケーキ
アステリスクのバスクチーズケーキは、一般的なバスクチーズケーキとは一見違います。しかし表面の焦げ、ほろ苦味、レアの口溶けとベイクドのねっとり感の多様な食感、濃厚さなど、バスクチーズケーキの主要な特徴をしっかり捉えています。
他方で生クリームやチーズの風味があるクッキーのトッピング、そして表面のキャラメリゼなど、新しいバスクチーズケーキを提示しています。基本はしっかりおさえた上で、新しい要素を加える非常にレベルが高いバスクチーズケーキなのです。筆者は究極だと思っています。
余談ですが、グルメ漫画の決定版として知られる『美味しんぼ』では、フランス人の料理人が日本で日本人が作るフランス料理を食べるシーンがあります。そこでフランス人の料理人は、日本人はフランス料理をそっくりそのまま真似ているだけであり、新しいことは何もしていないと批判します。本来のフランス料理は真似をするだけではなく、アレンジを加えるべきなのだと。『美味しんぼ』でのシーンにはややツッコミどこがありますが、一理あります。
アステリスクのバスクチーズケーキは、まさに新しいものを提示していました。バスクチーズケーキについての知識の多さと、敬意を感じられます。「何かすごいものを見せられてしまった」と感慨に浸るような逸品でした。
ティラミス (食べた感想)
アステリスクにはティラミスもあります。
一見、「え、これがティラミスなの?」と思ってしまいますが「ティラミス」という名前で売られていた、正真正銘ティラミスです。
洋菓子屋では意外と珍しいティラミス
ちなみにティラミスを売る洋菓子屋は珍しいです。これまで色々な洋菓子屋を訪問してきましたがティラミスを売る店は多くはありませんでした。
日本の洋菓子屋が主に販売しているのは、フランスやドイツ、オーストリアのケーキ、あるいはそれから派生したものです。一方でティラミスはイタリア生まれのスイーツです。ゆえに洋菓子屋ではティラミスを見かける機会は少ないのです。
洋菓子屋では珍しいティラミスをアステリスクは手掛けているのです。しかも見慣れたティラミスではなく「いったいどうやって作っているの?」といった驚きもあります。
アステリスクの解釈によって生まれた新しいティラミス
さて、ご覧のとおりアステリスクのティラミスは一般的なティラミスとは全く違う形状です。先のバスクチーズケーキに引き続き、独創性があふれています。
上にのっているのはチョコレート系のクリーム。その下のクリーム色の部分がおそらくマスカルポーネです。
断面は以下のとおり。
写真だとわかりにくい部分もありますが、てっぺんのチョコレートクリームの下にはスポンジ生地があります。一番下にもスポンジがあります。その周りはコーヒー風味のチョコレートでコーティングしてあります。
素人の私にはどうやって作るのかまったく想像ができない複雑さがあります。繰り返しになりますが、こんなティラミスは初めてです。
まさに芸術作品である
ティラミス特有のマスカルポーネの乳味とコーヒーの香り、そしてスポンジのふわふわ感とビスケットのサクサクした食感、砕いた板チョコのザクザクした食感などを感じます。
ティラミス本来の魅力をしっかり体現しながら、新たな味の融合や食感の彩りが存在しています。ティラミスという昔からある定番のスイーツをそのまま提示するのではなく、新しく解釈し新たに表現する。まさに芸術です。アステリスクのティラミスという作品です。
ティラミスとバスクチーズケーキを食べてみて「これがすごい洋菓子屋である」というものを見せつけられた気がします。
これまで普通に存在していたものが、作者によって新しいものとして表現される。新しいものとして表現されるからといって、以前まで特徴や特色が一切なくなるというわけではなく、本来の特徴をしっかり捉えたまま、古いものをしっかり引き受けながら、新しいものを提示する。このような批評的視点でスイーツを考案する洋菓子屋は、日本でもかなり少ないのではないかと思います。
アステリスクについて
最後にアステリスクについて簡単に紹介します。
アステリスクは東京都渋谷区の代々木上原駅から徒歩5分ほどの場所にあります。
代々木上原は高級住宅街と風情のある商店街、実力のあるカフェや飲食店が多くあることから、よくメディアも取り上げられます。芸能人が多いことでも知られています。アステリスクはそんな代々木上原の街にあります。
このエリアには他にもいくつか洋菓子屋があるのですが、アステリスクはやはり一番人気です。今回は休日の昼すぎに訪問したのですが、店の外まで列ができていました。
商品のラインナップは、生菓子、焼き菓子、チョコレート菓子、コンフィチュールなど様々。生菓子は先にも紹介したように、創造性があふれるもの多くあります。ティラミスやチーズケーキなど聞き慣れたケーキなのに、見たこともない造形で、新しい味や食感を楽しませてくれます。
商品のラインナップはお店のInstagramから一部確認できます。
そしてアステリスクでシェフを務めるのは和泉さんで、世界のコンクールに出場、入賞経験があります。和泉さんのこだわりを紹介した記事(代々木上原を舞台とした、終わりのない「アステリスク物語」 - cotta)では、作りたてを食べてほしいというこだわりから、焼き菓子には脱酸素剤は入れていないそうです。またケーキに使う果物は、全国の農家を回って厳選したものを使っているといいます。
今回紹介したバスクチーズケーキやティラミスのような独創性あふれるケーキが作られる秘密については、わかりませんでした。これからも既存の洋菓子を新しい形で表現してくれることを、私は楽しみにしています。
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