1802年にフランス・パリで創業し、1982年に東京の自由が丘に上陸した「ダロワイヨ(DALLOYAU)」。本場フランスの味を日本に持ち込み、2000年頃にはマカロンブームを起こし、日本の洋菓子界に多大な影響を与えた店の1つでもある。
ダロワイヨについて
ダロワイヨは、現在首都圏を中心に19店舗を展開している洋菓子屋である。自由が丘に独立した店舗を持っているが、それ以外は駅ビルやデパートなどに店舗があり、デパ地下系洋菓子屋であるといえる。
マカロンを日本に普及させた店として知られているが、マカロン以外にも生菓子、焼き菓子、パンなど非常に幅広い商品を手掛けている。本店の自由が丘ではパスタなどの食事メニューもあるほど。生菓子は基本的にダロワイヨ独自のデザインのものが多い。新商品も頻繁に販売しており、訪れるたびに驚かれる。
フランス・パリで1802年に創業したダロワイヨ
ダロワイヨの本店はフランスのパリにある。創業したのはなんと1802年である。ダロワイヨを開いたのは、ジャン・パティスト・ダロワイヨ氏で、彼の先代は、ルイ14世に仕えるパン焼き職人から食膳係になった人物である。それからダロワイヨの一族は、王侯貴族の食膳係をつとめる食のエリート一族になるわけだが、フランス革命により失職。そこで開いたのがダロワイヨである。当時はレストランだった。
フランス革命は、フランスがグルメ化した時期である。宮殿に使えていたシェフやパティシエが食を失い、次々に独立したからである。
1982年に日本に上陸
日本に店をオープンしたのは1982年である。不二家がダロワイヨとライセンス契約を結ぶ形で、自由が丘の駅前に1号店をオープンした。
自由が丘店は海外の1号店でもあった。『自由が丘スイーツ物語』(阿古真里 著)によると、この場所には以前、不二家があり、海外初出店のダロワイヨがこのような駅前の一等地に出店できたのは、不二家の尽力があったからではないかとしている。
ダロワイヨはマカロンブームの火付け役
いまでこそマカロンはコンビニでも買えるほど一般的な菓子だが、そうでない時代もあった。マカロンが一般的になったのは、2005年頃のマカロンブームからだ。
このマカロンブームの火付け役こそ、ダロワイヨである。その経緯が自由が丘のスイーツ店と消費文化を考察した『自由が丘スイーツ物語(阿古真里 著)』に詳しく書いてある。
本書によると、ダロワイヨは日本に上陸した1982年からマカロンを販売しているが、当時はそれほど人気ではなかった。2000年頃に本家ダロワイヨの社長が来日したとき、「フランスで人気のマカロンが日本で売れないのはおかしい」といったそうだ。
そこで当時の社長はマカロンを本格的に日本で売り込むために、PR活動を行った。ダロワイヨのマカロンは徐々に話題になり、そのうちテレビでもマカロンが取り上げられるように。こうしてマカロンブームが起り、おなじみのスイーツとしてコンビニでもみかけるようになったのである。
ちなみにマカロンは、2020年頃に二度目のブームがきているといわれる。今回話題になっているのは、「トゥンカロン」というデコレーションやトッピングをほどこしたマカロンだ。こちらは韓国初のマカロンをアレンジしたスイーツで、「トゥンカロン」という言葉は韓国語で「太っちょマカロン」を意味する。
パン、焼菓子、生菓子など色々な菓子がある
フランス発祥のケーキ屋というだけあり、その商品はフランス菓子が中心だ。そしてフランスのパティスリーのように生菓子、焼菓子、パン、マカロンなど幅広い食品を扱っている。いくつかの店舗には喫茶スペースもあり、ダロワイヨのケーキはもちろんのことフランス料理が食べられる(自由が丘店食べログ)。
看板商品のオペラは、ダロワイヨ発祥という説も
パリのダロワイヨの話であるが、ダロワイヨはケーキのオペラを初めて販売したお店であるという説がある(諸説あり)。発案したのは1955年。ダロワイヨが日本にあるおかげで、本場の味を日本にいながら楽しめる。発祥の店の味が楽しめるお店は、他の菓子ではなかなかないのではないだろうか。
ダロワイヨのバスク風チーズケーキ(400円)
今回ダロワイヨで購入したのは、「バスク風チーズケーキ」だ。フランスに本店を置くダロワイヨであるが、古典的なフランス菓子だけでなく、バスク風チーズケーキというトレンディなケーキも置いている。
ダロワイヨはバスク風チーズケーキをどう解釈し、表現してきたのか。
模様がある華やかなバスク風チーズケーキ
土台にジェノワーズ(スポンジ生地)を敷いた二層タイプ。表面を均一に焦がすのではなく、焦げ模様をつけてある。
バスク風チーズケーキといえば、表面を真っ黒に焦がしていたり、真っ黒ではないにしても薄っすら焦がすのが一般的だ。
一方でダロワイヨのバスク風チーズケーキは模様があって非常に華やか。さすが老舗のフランス菓子店だ。
カスタードクリームを混ぜたバスク風チーズケーキ
見た目だけでなく味についても、従来のバスク風チーズケーキは違う。なんとカスタードクリームを混ぜているのだ。これまで色々なチーズケーキを食べてきたが、カスタードクリームを混ぜたチーズケーキは少ない。もしかしたら初めてかもしれない。
文字通りカスタードクリームのまろやかさを感じられるのだが、甘いわけではなく、どちらかといえば甘さは控えている。程よい酸味があって、全体として落ち着いていて、深みのある味わいだ。
バスク風チーズケーキといえば、砂糖、生クリーム、クリームチーズを大量に使った、どっしり、こってり、濃厚でパンチのある味わいが特徴である。しかしダロワイヨは違う。控えめで繊細な味わいがある。
これが本場フランスからやってきたケーキ屋のバスク風チーズケーキなのか。そんなふうに思ってしまうチーズケーキだった。
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