チーズケーキ通信|チーズケーキ、チーズスイーツの専門ブログ

チーズケーキ、チーズスイーツをほぼ毎日紹介中!

バスクチーズケーキとは何か? 歴史、名前の由来、ブームになった理由などを解説

※ 当ブログのリンクの一部には広告が含まれます

少し前までバスクチーズケーキは、一部のお店しか販売していないめずらしいスイーツで、知る人ぞ知るめずらしいチーズケーキでした。

しかし現在では、コンビニでも買えるくらい一般的なものになりました。バスクチーズケーキだけを特集したレシピ本が発売され、またチョコパイのバスクチーズケーキフレーバーが販売されるようになりました。バスクチーズケーキは、誰が見ても明らかなブームになったのです。

ではいったいなぜ、バスクチーズケーキはブームになったのですか? ブームいつ頃からはじまったのでしょうか? そもそもバスクチーズケーキとは何か?

この記事ではそんな疑問を解決していければと思います。

【要点まとめ】

バスクチーズケーキとは何か?

スペイン・フランスにまたがるバスク地方の「ラ・ヴィーニャ」というバルで提供されていたチーズケーキを模倣したものとされている。バスク地方にちなんで「バスクチーズケーキ」と呼ばれるように。ベイクドチーズケーキの一種ではあるが、従来品よりも濃厚でしっとりしているのが特徴。

バスクチーズケーキブームはいつから?

2018年の7月頃。

なぜバスクチーズケーキはブームになった?

バスクチーズケーキは従来のチーズケーキとは異なるビジュアル、味、食感、濃厚さであり、常識破りなチーズケーキだった。「GAZTA」が販売することでブームになった可能性がある。

【特徴と名前の由来】バスクチーズケーキとは何か?

成城石井 バスクチーズケーキ (1)
成城石井のバスクチーズケーキ

バスクチーズケーキのブームをひもとく前に「そもそもバスクチーズケーキとは何か?」について紹介していきます。

まず特徴をまとめると以下の通りになります。

  • ベイクドチーズケーキの一種
  • スペインのラビーニャというバルで売られているチーズケーキを模倣したもの
  • 一般的なベイクドチーズケーキよりも、高温、短時間で焼くので表面が焦げ、なかが半熟ぎみになる

バスクチーズケーキはバスク地方のチーズケーキを模倣したもの

スペインのバスク地方にある「ラビーニャ」というバルで出されている人気の名物的チーズケーキがあるのですが、それを模倣して作ったチーズケーキが現在日本で「バスクチーズケーキ」として普及しています。バスクチーズケーキという名前はバスク地方からきているのです。

そして以下はバスクチーズケーキの発祥の店である可能性が高いラビーニャのストリートビューです。

「ラビーニャ」のお店の公式サイト

バスク地方のチーズケーキだから「バスクチーズケーキ」と呼ばれるように

なぜバスクチーズケーキと呼ばれているのか? 前述の通り、それはバスク地方のチーズケーキであったことに由来しています。バスクチーズケーキの作り方はベイクドチーズケーキと大きくは同じですが「バスク地方で売られているチーズケーキ」ということで、「バスクチーズケーキ」「バスク風チーズケーキ」と呼ばれるようになりました。というより作り手がバスクチーズケーキといった商品名で販売するようになった、という流れです。

ちなみにバスクチーズケーキと呼んでいるのは外部の人だけのようで、ラビーニャ(サンセバスチャンのバル)では「Tarta de Queso」という、スペイン語でチーズケーキを意味する名前で売られています。現地だと「サン・セバスチャン・チーズケーキ」と呼ぶ人もいるそうです。

ちなみにバスクチーズケーキという呼び方は日本以外でも見られるようです。たとえばアメリカの大手総合情報サイトBloombergやレシピサイトのTASTEでは、「Basque cheesecake」という表記をでした。

参考資料
The Hottest Dessert of the Year Is Burnt - Bloomberg
TASTE
大ヒット「バスチー」 本場バスク地方ではバルの名物

他にはバスクチーズケーキを「Basque Burnt Cheesecake(バスクの焦げたチーズケーキ)」と呼んでいる例もみつけました。

日本のバスクチーズケーキを見て「Basque」と名付けたのか、それとも同じようにバスク地方だから「Basque」と名付けているのでしょうか。海外におけるバスクチーズケーキのルーツについては、今後調べていければと思います。

味や食感の特徴|ベイクドチーズケーキよりも濃厚でしっとりしている

駒込 ココフルカフェ バスクチーズケーキ (21)
ココフルカフェ

バスクチーズケーキと一般的なベイクドチーズケーキとの味や食感の違いについて、まとめると以下の通りになります。

  • バスクチーズケーキは、クリームチーズを多量に使用しているので濃厚
  • バスクチーズケーキは高温短時間で焼く
  • 薄力粉の少量にする場合も
  • 焼いているのにレアのような食感がある場合も

バスクチーズケーキとベイクドチーズケーキの違い

バスクチーズケーキといってもお店ごとに大きく違うので、上記の例に当てはまらないケーキもあります。

大きな特徴はやはり「濃厚さ」です。前述のとおりバスクチーズケーキは一般的なベイクドチーズケーキの倍の量のクリームチーズを使用しています。味はとても濃厚になりズッシリした印象になり、ゆえに「重い」「クドい」といって敬遠する人もいます。

また一般的ベイクドチーズケーキに比べて、焼く際の温度は高く、焼き時間は短くなっています。ゆえに火が通りづらいケーキの中央部分は半熟気味の質感になりますが、一方で火が当たりやすいケーキの外側は、ベイクドチーズケーキのようにしっかり焼けた質感になります。

以下の表はバスクチーズケーキと一般的なベイクドチーズケーキのレシピの比較したものです。

チーズケーキのレシピの違い

その他、つなぎとして使用する小麦粉の量も少なくしている場合もあり、一般的なベイクドチーズケーキに比べて、レアに近いしっとりした舌触りに仕上がっていることが多いです。

6th by oriental hotel バスクチーズケーキ
6th by oriental hotel

焼いているのにレアに近い食感。そして従来のチーズケーキよりも圧倒的に濃厚。これがバスクチーズケーキの大きな特徴であり、従来のチーズケーキと決定的に違う点であり、この目新しさがバスクチーズケーキがブームになった理由の1つだと確実にいえるように思います。

バスクチーズケーキはなぜブームになったのか?

みれい菓 バスクチーズケーキ (8)
みれい菓

バスクチーズケーキは2018年7月頃からブームに火が付いたといえます。

味、見た目、食感、どれもが従来のチーズケーキとは違っていた

バスクチーズケーキがブームになった理由は、ずばりこれまでのチーズケーキとまったく違う常識破りのチーズケーキだったからです。

それまでのチーズケーキは、レアであれスフレであれベイクドであれ、どれを食べても予想の範疇に収まる味、食感、見た目でした。 しかしバスクチーズケーキは違いました。前述の通り、バスクチーズケーキは従来のチーズケーキとは見た目が違います。その真っ黒なビジュアルは非常にインパクトがあります。また味も食感、濃厚具合に関しても従来のスフレチーズケーキ、ニューヨークチーズケーキやレアチーズケーキなどと圧倒的に違います。

バスクチーズケーキがいかに常識から外れたものであったかは、オーブン・ミトンというケーキ屋でシェフを務める小嶋ルミさんも語っています。

現地在住で地域の食事情に精通する女性から教わったレシピをベースに、焼いたが、小麦粉はつなぎ程度にしか使わず、大半がクリームチーズと砂糖だけという、チーズケーキの常識を覆すレシピだったので困惑した。

大人スイーツ「バスク風チーズケーキ」が日本で大ヒットした理由

圧倒的に濃厚で、従来のチーズケーキとは味も食感も段違いだったバスクチーズケーキは、ながらく目ぼしい特徴をもったものが登場していなかったチーズケーキジャンルにおいて、異彩を放っていました。

またこれはこれは筆者の空想に過ぎませんが、バスクチーズケーキはラーメン二郎と類似点が多くあり、二郎的な魅力もあったのではないかと考えています。二郎的だったかどうかは別にして、バスクチーズケーキは明らかに常識破りなスイーツでした。それがブームになった1つの要因であることは間違いありません。しかしバスクチーズケーキがブームになった要因はそれだけではありません。というのもバスクチーズケーキは2011年から存在していましたが、2018年までほとんど注目されなかったからです。

バスクチーズケーキは2011年頃から存在したがブームにはならなかった

バスクチーズケーキがブームになったのは2018年7月頃ですが、バスクチーズケーキは2011年から存在していました。

バスクチーズケーキの日本での歴史を調べるために、ツイッターのタイムラインをさかのぼってみたところ、「バスクチーズケーキ」という言葉が初めてツイッターに現れたのは、2012年4月でしたhttps://twitter.com/superprimera/status/191034265893470208)。

「天然生活」というなにかでバスクチーズケーキが紹介されていたことがわかりました。調べてみると「天然生活」とは、シンプルな生活を楽しむためのライフハック本で、料理やお菓子のレシピやインテリア、ファッションなどが紹介されている雑誌です。

その天然生活の2012年の5月号で、「カオリーヌ菓子店」というお店のバスクチーズケーキが紹介されていました。本書では、カオリーヌ菓子店のシェフであるかのうかおり氏が、バスク地方を旅したときに出会ったチーズケーキとして、バスクチーズケーキが紹介されています。本書のなかでは「バスクのチーズケーキ」という名前ではありますが、その見た目は完全に現在のバスクチーズケーキです。

その一部を引用します。

さて、フランス領のバスクでガトーバスクを堪能し、スペイン領 のバスクへと入った、かのうさん「まったく、名物などではないんですが、 そこで、やたらおいしいチーズケーキに出合ったんです」 ぶらぶらと歩いているときに、ふと見つけたバルの看板。こんがり焼けた、日本人の感覚では完全に”こげている”チーズケーキが大きく写っていました。

天然生活VOL.88

先のツイートは天然生活のバスクチーズケーキの写真をみての感想だと考えられます。さらにこの雑誌で紹介されていた「カオリーヌ菓子店」の公式サイトを調べてみると、なんと2011年11月2日頃にはバスクチーズケーキを販売していることがわかりました。

カオリーヌ菓子店のブログをみてみると、「2011年の夏にスペインのバスク地方にあるバルに旅行し、そこで食べたチーズケーキに感激し、日本でその味を再現することにした」との記載があります。

※参考: 新発売『バスクのチーズケーキ』 カオリーヌ菓子店

そして2011年11月には「バスクのチーズケーキ」という名前でバスクチーズケーキを販売していました。これ以前にバスクチーズケーキに関して書かれたサイトやSNSでの投稿は見つけられなかったので、カオリーヌ菓子店が日本で初めてバスクチーズケーキを販売したお店の可能性もあります。それが2011年。

日本で初めてバスク風チーズケーキを販売したお店は2013年の「オーブン・ミトン」であるという説もあります。いずれにしてもバスクチーズケーキはブームよりも遥か以前に存在していました。

※参考:大ヒット「バスチー」 本場バスク地方ではバルの名物

カオリーヌ菓子店がバスクチーズケーキを販売して以降、バスクチーズケーキはレシピ本で紹介されたり、チーズケーキ専門店で販売されたり、ツイッターでつぶやかれたり、ネットのニュースサイトで取り上げられたこともありました。

またカオリーヌ以降も、学芸大学にあるチーズケーキ専門店「A Works」、日比谷の「6th by oriental hotel」などではブームの前からバスクチーズケーキを販売しており、それをツイッターでシェアする人もいました。

しかし2018年の7月頃まで、バスクチーズケーキがブームになることはありませんでした。2018年まではバスクチーズケーキは、単なるチーズケーキの一種類に過ぎなかったと考えられます。たとえばチーズケーキ専門店で販売されているゴルゴンゾーラのチーズケーキや、抹茶のチーズケーキのような。

しかしバスクチーズケーキは、2018年になって急に注目されるようになります。あるお店のオープンをきっかけにして。

GAZTAのオープンがきっかけでバスクチーズケーキがブームになった

バスクチーズケーキは2011年頃から存在していました。しかしブームになったのは2018年7月からです。なぜバスクチーズケーキが急に注目されるようになったのでしょうか。きっかけは「GAZTA(ガスタ)」というバスクチーズケーキ専門店のオープンだと考えられます。

GAZTAのオープン日以降、「バスクチーズケーキ」という単語を含むツイートが増えており、またテレビ番組でバスクチーズケーキが取り上げられる機会が圧倒的に増えました。

・2018年7月からバスクチーズケーキ関連のツイートが急増

以下の画像は2018年の「バスクチーズケーキ」という単語が含まれたツイートの数を調べたものです。

縦にバスクチーズケーキのツイート数、横が月

期間で絞り検索し、1つ1つ目視で計測したので誤差はありますが、2018年の7月以降、明らかに「バスクチーズケーキ」という単語を含んだツイートの数が急増していました。さらに2018年7月からは、バスクチーズケーキはテレビで取り上げられるようになります。

・2018年7月からバスクチーズケーキがテレビで取り上げられる

以下は表は、バスクチーズケーキがテレビで紹介された例をまとめたものです。

2018年
7月7日
TBS・王様のブランチで「GAZTA」のバスクチーズケーキが紹介される
(バスクチーズケーキという名前がテレビで紹介されたのは初)
7月17日日本テレビ・ZIP!で「GAZTA」のバスクチーズケーキが紹介される
8月7日フジテレビ・めざましテレビで「GAZTA」のバスクチーズケーキが紹介される
8月16日TBS櫻井・有吉THE夜会でゲストの伊達公子の差し入れとして
「GAZTA」の「バスクチーズケーキ」が紹介される
8月22日日本テレビ・PON!で「GAZTA」のバスクチーズケーキが紹介される
9月12日日本テレビ・news everyで「GAZTA」のバスクチーズケーキが紹介される
12月6日ヒルナンデス「2018下半期テレビ取材殺到グルメBEST10」で
「GAZTA」のバスクチーズケーキが紹介される
2019年
1月17日
日本テレビ・スッキリで「GAZTA」のバスクチーズケーキが紹介される
3月2日フジテレビ・にじいろジーンで「GAZTA」のバスクチーズケーキが紹介される
3月9日日本テレビ・嵐にしやがれで「GAZTA」のバスクチーズケーキが紹介される

GAZTAがオープンする前は、バスクチーズケーキがテレビで紹介されたことありませんでしたが、2018年7月のGAZTAのオープンをきっかけにして、バスクチーズケーキがメディアに取り上げられるようになりました。

ちなみに2018年の12月には、日本テレビの「ヒルナンデス」で「2018下半期テレビ取材殺到グルメBEST10」としてGAZTAのバスクチーズケーキが紹介されています。

・GAZTA(ガスタ)のオープンによってバスクチーズケーキがブームになる

GAZTAのオープン後、ネットでもテレビでもバスクチーズケーキが話題になる機会が増えました。「バスクチーズケーキブームというより、GAZTAのブームでは?」というツッコミもあるかもしれませんが、GAZTAが別の商品を販売していたら、メディアに取り上げられていない可能性もあります。バスクチーズケーキという、常識破りのチーズケーキだからこそ、メディアが飛びついた可能性があります。そもそもGAZTAがバスクチーズケーキを商品として選んだことは、すでにブームであったとも考えられます。

「何をもってブームの始まりとするか?」という意見もあるかもしれません。この判断は人によって異なるところではありますが、全国放送のテレビ番組に、何度も取り上げられるようなったという事実は、ブームの始まりだと判断していい、大きな材料の一つとであるはず。「GAZTA」のオープンによってバスクチーズケーキがブームになったと十分にいえるのではないでしょうか。

・2019年3月26日、「バスチー」の登場でブームがさらに盛り上がる

「GAZTA」のオープンによってじわじわブームがきていたバスクチーズケーキ。そのブームは、2019年3月26日に発売されたローソンの「バスチー」で爆発します。

ローソン バスチー の写真 (9)
ローソンのバスチー

ローソンのバスクチーは、バスクチーズケーキを模倣したスイーツ。これが、記録的大ヒットします。それまでバスクチーズケーキはスイーツを日頃から食べる人、お菓子作りが好きな人の間でのブームにすぎませんでした。しかしローソンの「バスチー」が記録的な大ヒットによって、バスクチーズケーキは世間的なブームになったのです。

その証拠に、「バスチー」のヒットを契機にしてカフェ、パティスリー、洋菓子店、チルド菓子メーカーがバスクチーズケーキを販売するように。2018年の7月頃にはじまったブームが、ローソンのバスチーで爆発しました。

ローソンのバスチーの大ヒットが、バスクチーズケーキブームを起こした、との見方もありますが、筆者はあくまで、GAZTAがブームを作ったと考えます。なぜならGAZTAのヒットがなければ、ローソンがバスチーを開発することはなかった可能性があるからです。

バスチーを開発した東條氏は、メディアにて、バスクチーズケーキ専門店が話題になっていたことに注目。つまり、バスクチーズケーキ専門店のヒットから、商品開発のヒントを得ていると考えられます。

東條氏が注目したのは18年夏。東京都内にオープンしたバスクチーズケーキ専門店が話題になるなど、ブームの兆しが見え始めていました。

1200万個突破 ローソン「バスチー」は数年に一度の大型商品

日本では2018年から専門店が登場して注目を集めており、ローソンでもその流行の兆しをとらえたうえで、現地にも足を運んで本場の味を確認。「これは売れる!」と確信を得たそうです。

ローソン「バスチー」、爆発的ヒットの裏にあった「商品化スピード」

「GAZTA」のヒットがなければ、ローソンのバスチーは生まれていない可能性があり、バスクチーズケーキブームを作ったのは、「GAZTA」だといえるのです。

なぜGAZTAのオープンがきっかけでバスクチーズケーキはブームになったのか?

「GAZTA」がバスクチーズケーキを販売することで、やっとバスクチーズケーキはブームになりました。バスクチーズケーキを販売するお店は他にもあったのに、どうしてGAZTAだけ、バスクチーズケーキブームの立役者になれたのでしょうか? つまり、なぜGAZTAは注目されたのでしょうか?

その理由は、GAZTAがあまりにも特徴的なお店だったからだと推測しています。

GAZTAは話題になるのが必然ともいえるほど特徴的な店だった

まずGAZTAの決定的な特徴は以下の通りです。

  • 日本初のバスクチーズケーキ専門店
  • 注目度が高い場所に先進的な外観でオープンした
  • 箱も紙袋もデザインにこだわっていた
  • キャッチコピーが強かった

GAZTAはこれらの特徴を持っており、この4つの特徴がすべてかけ合わさることでブームは起きたのではないかと考えています。

・GAZTAは日本初のバスクチーズケーキ専門店だった

今ではバスクチーズケーキを専門に売るお店がいくつかありますが、GAZTAが登場するまで、バスクチーズケーキの専門店は存在していません。

GAZTAが登場するまで、バスクチーズケーキを販売していたのは、一部のチーズケーキ専門店とカフェのみ。そこに突然、バスクチーズケーキだけを販売するお店が登場しました。それだけでも注目度は高いはず。

・GAZTAキャッチコピーが強かった

GAZTAはオープン後、テレビやネットなど色々なメディアで取り上げられているが、決まって語られるのが、

「門外不出だったレシピを、世界で唯一知ることを許された日本人パティシエが作ったバスクチーズケーキ」

という強烈なストーリーです。

バスクチーズケーキの原点である、スペインのバル「LA VINA」は、家族経営のお店で、外部の人間は基本的に厨房に入れないそうです。

しかしGAZTAのシェフが懇願に懇願を重ねた結果、厨房に入り、チーズケーキのレシピを教えてもらったそうです。「世界で唯一」という言葉付け加えられていることもあります。

「門外不出」「世界で唯一」など、これらのストーリーがメディアで取り上げられ、「本場のバスクチーズケーキはGAZTAでだけ食べることができる」という印象を多くの人に与えました。

意地悪な言い方をするなら「これまでのバスクチーズケーキはすべて偽物で、GAZTAのバスクチーズケーキこそ本物である」というアピールがなされたのです。

実際、そのレシピが門外不出だったかどうかは議論の余地がありますが、「門外不出」「本家直伝」「本場」といったパワーワードが並べばスイーツに興味がある人は見逃さないでしょうし、「一度は食べてみよう」と思うのではないでしょうか。

そして実際、大ヒットしました。連日GAZTAのチーズケーキを求める人が列をなし、全国放送の番組にも紹介されました。

【参考】

・ GAZTA注目度が高い場所に先進的な外観でオープンした

GAZTAは白金高輪駅から徒歩3分、港区白金にあります。このエリアはタワーマンションと一軒家が立ち並ぶ住宅地です。

そしてこのエリアは、なぜか人気の洋菓子屋が並ぶ、スイーツ激戦区でもあります。

「GAZTA」の系列店で、食べログの白金スイーツランキングで1位になっているパティスリー「メゾンダーニ」。ベーグルの専門店「マルイチベーグル」。エッグタルトの専門店「オーファクトリー&カフェ バイ エッグセレント」。独特のデザインのケーキで人気のパティスリー「パッションドゥローズ」。これらの人気店が、GAZTAの50メートル圏内にあります。

以下の画像は白金高輪駅周辺の有名菓子店に所在地を表したマップです。

白金高輪駅周辺洋菓子店

この近距離に5件。また少し歩けば、メゾンカイザーの一号店もあります。どのお店もメディアに取り上げられるほど人気のお店です。そんな激戦の地に突然、バスクチーズケーキという謎のチーズケーキを専門にしたお店が登場すれば、注目を集めることは間違いないでしょう。

GAZTA ガスタ 白金高輪 (1)

アップルストアのような洗練されたデザインと、アンティークショップのような上品さも持ち合わせた外観。思わず写真に収め、SNSでシェアたくなるような特徴的な外観だったのです。

ちなみにこのエリアにある洋菓子店はどれも特徴的な外観ではあります。しかしながらやはり、GAZTAの外観は未来的で、先進的です。こんなお店が白金の閑静な住宅地に、突然オープンすれば、話題にならないはずがありません。

・GAZTAは箱、紙袋のデザインも圧倒的だった

さらにGAZTAがすごかったのは、単なるチーズケーキなのにブランド品かと思うような箱、紙袋を使っていたこと。一般的なケーキ屋でもらえる箱といえばよくみる薄い紙の箱。

袋にしても紙袋ならいいほうで、街のケーキ屋はビニール袋だったりします。それが当たり前だと思っていましたが、GAZTAの箱は一味違っていました。なにか大切なものを収納しているかのような頑丈で上品な箱なのです。

ブランド品であるかのような高級感のある紙袋。SNS映えすることは間違いありません。

また手土産、プレゼントにも喜ばれそうなこのパッケージは、リアルな口コミにおける拡散力も持っていたはず。SNS、口コミでGAZTAが、そしてバスクチーズケーキが話題になったのは必然だったでしょう。

GAZTAはコンテンツが圧倒的に強かったからブームの立役者になれた

箱と紙袋の気を配っているお店は他にも存在しますし、お店の外観が特徴的なお店もたくさんあります。しかし「GAZTA」はそれに加えて「バスクチーズケーキ専門店」「白金の人気スポットにオープン」「門外不出というパワーワード」という強力なコンテンツを持っていました。SNS、ネットのニュースサイト、テレビなど、メディアで紹介するには十分すぎるコンテンツを持っており、話題になるのも必然でした。

GAZTAが莫大なお金をかけて広告を打った可能性もあります。(検証はできませんが)しかしたとえお金をかけて広告を打ち、ネットやテレビに取り上げられたとしても、肝心のコンテンツが弱ければ一時的なヒットで終わってしまうでしょう。それは過去に登場していたバスクチーズケーキがネットメディア・雑誌に取り上げられたのにブームにならなかったことからわかること。

その点、「GAZTA」はバスクチーズケーキをブームに押し上げるほど、強烈で圧倒的なコンテンツを持っていました。「GAZTA」がスイーツ界に、チーズケーキ界に与えた影響は小さくはないでしょう。

GAZTAが話題になることでバスクチーズケーキは話題のスイーツになった

もう1つ付け加えたいのは、GAZTAが話題になったことでバスクチーズケーキも一緒に話題になったことです。

話題のスイーツになったということは、食べる口実ができます。SNSでシェアするときには「話題のバスクチーズケーキ」という文言を書けます。特にGAZTAはテレビ番組でも紹介されたので、「テレビで話題の…」という文言を加えてシェアできます。これによって流行を先取りしていることをアピールできます。

「バスクチーズケーキが話題になっているらしい」という口コミが増えれば、流行に乗り遅れてはいけないと、多くの人がバスクチーズケーキを求めるようになります。そして流行に乗ったことをシェアします。この流れでバスクチーズケーキはブームになっていたったと推察できます。

バスクチーズケーキのその後

2018年の夏頃ブームに火が付いたバスクチーズケーキは、大手コンビニ各社で発売されるようになりました。ローソンの「バスチー」を筆頭にセブンイレブン、ミニストップ、そして2020年にファミリーマートも。

その他、成城石井や紀伊国屋といったスーパーも独自のバスクチーズケーキを販売。イオンなどの一般的なスーパーでも見かけるようになりました。

フレーバー系バスクチーズケーキも

また、2020年に入ると抹茶バスクチーズケーキやバナナバスクチーズケーキなど、フレーバー系のバスクチーズケーキも登場しました。

cocoful(ココフル) 抹茶バスクチーズケーキ (3)
ココフルカフェ、抹茶のバスクチーズケーキ

セブンイレブン キャラメルバスクチーズケーキ (1)
セブンイレブン キャラメルバスクチーズケーキ

ローソン バスチー バスク風ショコラチーズケーキ (14)
ローソン バスク風ショコラチーズケーキ

バスクチーズケーキはパン屋、ドーナツ屋にも

バスクチーズケーキブームに乗り遅れまいとコラボ商品もたくさん登場しました。大手チェーンベーカリーの「ヴィ・ド・フランス」では「バスクチーズケーキ風に焼き上げました」という触れ込みで新作を販売。

2020年の7月頃にはクリスピークリームドーナツがバスクチーズケーキという商品名で、ドーナツを発売しました。

クリスピークリームドーナッツ (8)

クリスピークリームドーナッツ (2)

またバスクチーズケーキとアイスのコラボ商品や、バスクチーズケーキとチョコパイのコラボ商品まで発売されるようになりました。

またバスクチーズケーキ風プリンは興味深いです。そもそもバスクチーズケーキは、プリン風のチーズケーキともいえるのですが、逆にプリンがバスクチーズケーキを模倣しているのです。とにかく「バスクチーズケーキ」という言葉を使いたい、そんな気概が見えます。

バスクチーズケーキは「流行グルメ2020」で第一位に

2020年11月に「HOT PEPPERグルメ」が発表した「流行グルメ2020」でバスクチーズケーキは第一位になりました。これは「HOT PEPPERグルメ」が、2020年に流行ったグルメを全国の20・30代男女約2,000人にアンケートして調査したものです。

1位がバスクチーズケーキで566票。
2位はキャンプ飯で423票、3位はダルゴナコーヒーという結果になっています。
すべての結果をみる

リクルートの調査なので、色々偏りはあるかもしれません。3位のダルゴナコーヒーは、筆者は初めてきいた。それでもこういった調査で1位に入るということは、バスクチーズケーキが多くの人にとって印象的な食べ物であったということでしょう。

チーズケーキの年表を作るなら、バスクチーズケーキの名は必ず、そして大きく刻まれるに違いありません。

終わりに

バスクチーズケーキがブームになった経緯をまとめます。

バスクチーズケーキは、従来のチーズケーキとは味や食感、見た目が圧倒的に違う常識破りのチーズケーキでした。7年間注目されていませんでしたが、圧倒的コンテンツ力をもったお店「GAZTA」が販売に着手したことで、バスクチーズケーキはブームに火がつきます。

そのブームはローソンが2019年3月に発売した「バスチー」によってさらに盛り上がります。スイーツ界のブームでしかなかったバスクチーズケーキが、世間のブームになり、その後、バスクチーズケーキを模倣したプリン、菓子パン、チョコパイが発売されなど、一大ブームになりました。バスクチーズケーキはスイーツ界の歴史に名を残すスイーツになりました。バスクチーズケーキのブームは「GAZTA」の存在なしには語れません。「GAZTA」がスイーツ界に与えた影響は大きいといえます。