引出物の定番として知られており、また東京ディズニーランドのオフィシャルスポンサーでもある「Juchheim(ユーハイム)」。
ヨックモックやモロゾフ、風月堂のゴーフルなどと同じく、手土産の定番として多くの人に愛されてきた。
そんなユーハイムは、バウムクーヘンのイメージが強いのだが、実はチーズケーキも販売している。しかも店頭限定のチーズケーキとオンラインショップ限定のチーズケーキの2種類ある。
そのすべてをここで紹介していく。
Juchheim(ユーハイム)について
ユーハイムは創業してから100年を超える老舗洋菓子屋だ。その歴史について後述しているので興味がある方はご覧いただきたい。
ユーハイムの創業者は、ドイツ出身のカール・ユーハイム氏だ。ドイツで学んだ本場の洋菓子の味を日本にもちこみ、日本の洋菓子のレベル向上に一役買ったとも言われている。
全国に約300店
お店は基本的にデパ地下や駅ビル、ショッピングモール、駅ナカなど、商業施設にあって、そのほとんどが対面販売形式のお店だ。
店舗数は非常に多い。筆者はデパ地下があると必ず立ち寄るようにしているのだが、ありとあらゆるデパ地下でユーハイムをみかける。

この機会に店舗数を数えてみたが、系列店を入れると300近くあった。本店がある神戸にはなんと5店舗。東京の新宿だけでもなんと4店舗ある(京王百貨店、小田急百貨店、高島屋、伊勢丹)。
ちなみにもう1つデパ地下などでよくみかける洋菓子屋としてモロゾフがある。

どちらが店舗数が多いか調べてみたが、モロゾフは約1200店だった。もうわけがわからない。スターバックスの店舗数が約1600店なので、それよりもちょっと少ないくらいだろうか。
バウムクーヘンだけでなく、焼き菓子やケーキ、独特なドイツ菓子も
話がそれたが、商品について紹介する。代表的な商品はもちろんバウムクーヘンだ。
厚さも直径も様々なバウムクーヘンが売られている。また店によってラインナップが若干ことなるが、ケーキも販売している。
チーズケーキやショートケーキやモンブラン、シュークリームなど定番のケーキがある他、フランクフルタークランツ、フロッケンザーネトルテといった、見慣れない菓子も。おそらくドイツ菓子だろう。
ユーハイムの商品はオンラインショップでも購入できる
ユーハイムはオンランプも運営もある。
※ユーハイムの公式オンラインショップ(AmazonやYahoo!ショッピング、楽天などでもユーハイムの商品が売られているが、ユーハイムが直接販売しているわけではなく、代理店や百貨店が販売している。Amazonに限っては得体のしれない業者が勝手に転売している場合もあり注意したほうがいい。割高である場合もある。これらのサイトで購入する場合は販売業者をしっかりたしかめ、その上で公式サイトよりも割高でないかと確かめたほうがよい。個人的には公式サイトから購入することをおすすめしたい)
オンラインショップでは人気のバウムクーヘンやクッキー、そして別ブランドで販売している神戸牛のミートパイなどが。
またあとで詳しく紹介するが、オンライン限定のチーズケーキがある。
【実食解説】ユーハイムのバウムクーヘン

ユーハイムを語るならやはりバウムクーヘンは食べておくべきだろう、ということでバウムクーヘンを購入した。
購入したのは1080円の薄めのバウムクーヘン。こちらのサイズのバウムクーヘンは公式オンラインショップでも購入できる(公式オンラインショップ)。
添加物を使用せずにつくったバウムクーヘン
ユーハイムでは無添加の菓子製造を心がけており、このバウムクーヘンの添加物を使用せず、自然の材料だけ製造した商品の1つだ。
その努力もあってか、DLCというドイツの国際食品品質品評会で金賞を受賞している。


丁寧な味のバウムクーヘン

ユーハイムのバウムクーヘンを食べるのは初めてだったのだが、とても丁寧に作られた味をしているように感じた。
普段食べるバウムクーヘンといえば、コンビニで売っているチルド菓子コーナーにあるバウムクーヘン、もしくは焼き菓子コーナーにあるバウムクーヘン、もしくは無印良品のバウムクーヘンくらいだ。
それらのバウムクーヘンも美味しいのだが、ユーハイムのはまた違う魅力があった。
とても口当たりがよく、さっぱりした味わいなのだ。にも関わらず、バターや卵の豊かの風味をしっかり楽しめる、そんな思い出深い味わいだった。さすが引出物の定番に選ばれているだけある。
他にも以下のような小さなバウムクーヘンがはいったものもある。

【実食解説】店舗限定のチーズケーキ
前述の通りユーハイムの店舗ではカットケーキも売っている。その1つにチーズケーキがある。

生菓子を売っている店舗と売ってない店舗があり、また生菓子を売っている店舗でも、チーズケーキがない場合がある。確実に手に入れたい方は、あらかじめ店舗に連絡して確認しておくことをおすすめする。筆者は新宿の京王百貨店で購入した。
ちなみにチーズケーキはドイツ語では「ケーゼトルテ」や「ケーゼクーヘン」といったりするので、ドイツ菓子屋やドイツで修行した経験があるシェフがいるお店では、そのどちらかの名前で売られていることがある。
トシ・ヨロイヅカのケーゼ こしもとのケーゼトルテ トルクーヘンのケーゼトルテ
・こしもとの詳細
・トルクーヘンの詳細
一方で、ユーハイムはドイツ人が創業者のお店であるが「ケーゼ」や「トルテ」といった単語はなく、「チーズケーキ」という商品名だ。普通にチーズケーキという名前にしたほうが、わかりやすいからだろうか。「フランクフルタークランツ」というややこしい名前のケーキがあるのに、チーズケーキは普通に「チーズケーキ」としてしまうのは、味気ない気もする。



値段は476円で、デパ地下のケーキ屋としてはスタンダードな値段だ。
表面の光沢は多分だが杏ソースのコーティングだ。こういったコーティングあるチーズケーキはよく見かける。
トリアノン パティスリーマテリエル
・パティスリーマテリエル
外見はいたって普通のチーズケーキという感じだ。

その味は、感無量。さすが老舗の洋菓子屋なだけある。妥協していない。
チーズケーキはずっしりしており、材料を贅沢につかっている感じがある。口にいれた瞬間、乳製品特有の豊かな風味に包まれる。きっと材料に妥協せずにつくっているのだろう。
クッキー生地はしっとり系で、食感における存在感は薄いが、バターの風味がしっかりあっていいアクセントになっている。
特筆すべき大きな特徴はなく、いたって普通のチーズケーキかもしれない。それでもチーズケーキ本来の美味しさを感じれる、チーズケーキ代表するチーズケーキといった感じの味になっていた。バウムクーヘンのお店だからといって全く妥協がない。
【実食解説】北海道とろけるチーズケーキ(ネットで購入)
続いてはオンラインショップで購入した「北海道とろけるチーズケーキ」。オンラインショップ以外だと北海道の店舗で購入できるらしい。
10センチ(1188円)と15センチ(1728円)の2つのサイズがあって、今回は10センチを購入した。


この北海道チーズケーキは、バターやクリームチーズのメーカーとしても有名な「よつ葉乳業株式会社」とコラボして、北海道産の乳製品だけを使って作っている。
チーズそのものをイメージしたチーズケーキ

写真だとわかりにくいが、側面はスポンジ生地のような質感で、これはアーモンドパウダーを使った生地だそうだ。また天面はシュー生地になっており、カットするとまるでカマンベールチーズを切っているような感覚になる、らしい。
公式サイトの商品説明には「ほぼチーズを目指した」と書かれており、だからこのようなカマンベールチーズっぽいビジュアルなのだろう。
※本物のカマンベールチーズ
※本物のカマンベールチーズ
中はとろとろのチーズケーキ
そして断面はなかなか美しい。クリームのようにとろとろの状態になっている。


力強いチーズの味を楽しめるチーズケーキ

味はもう、文句なしといった感じだ。褒めてばかりな気がするが本当に美味しいのだ。
まず側面のアーモンドを使ったというスポンジ生地の甘い風味が非常に心地よい。この生地だけで食べてみたいくらいだ。
そして中央の、とろとろの部分ももちろん美味しい。そのしっとりした舌触り。そのなかからこみ上げてくるチーズの力強い風味を感じられる。さすが「チーズを目指した」というだけある。
バウムクーヘンで有名なユーハイムが、まかさこんなユニークで美味しいチーズケーキを作っているなんて……。
値段や購入方法、日持ち

値段 | 10センチ(1188円) 15センチ(1728円) +送料と消費税 |
カロリー | 666kcal(10センチ) |
日持ち | 製造日より14日(冷凍) 解凍後3日(要冷蔵) |
購入方法 | 公式オンラインショップ もしくは北海道の店舗 |
備考 | ラッピング可能 チーズケーキは冷凍便で届く |
よつ葉乳業株式会社とのコラボで100%北海道産乳製品使用が実現! 甘さ控えめで“ほぼチーズ”「北海道とろけるチーズケーキ」 ※1日10個限定となります。
公式サイトより
「北海道とろけるチーズケーキ」は、チーズケーキというジャンルを超えた、“ほぼチーズ”を目指した、チーズデザートです。
その最大の特徴は「とろける食感」。側面をアーモンドパウダー入りの生地で、天面はシュー生地に覆われたチーズクリームは、カットするとまるでカマンベールチーズを切ってるような、チーズ独特のテクスチャーを刃先に感じます。甘さは控えめで、とろける食感とともに、チーズの味わいをお楽しみいただける、オンラインショップと北海道だけの限定販売です。
【実食解説】カマンベールチーズケーキ(ネット限定)
ユーハイムのオンラインショップには、もう1つチーズケーキが売っている。それがカマンベールチーズケーキだ。
6センチの小さなチーズケーキで、今回は3個入を購入した。6個入りもある。こちらのチーズケーキはオンラインショップ限定だ。



外見は、カマンベールチーズそのものに近いのだが、実際はスポンジ生地だ。先の大きいサイズの「北海道とろけるチーズケーキ」と近い外見をしている。先のチーズケーキの小さいバージョンにもみえる。
中身はとろとろしているわけではないが、美味しそうであることは間違いない。


食感としては、ふわっとしたスポンジの食感のなかにクリーム状のチーズケーキがいる感じ。
そして味は濃厚だ。口にいれるとその瞬間にチーズの風味を感じる。カマンベールはアクセント程度であって、それほど強くはない。
以前、タント・マリーというお店でカマンベールを使ったチーズケーキを食べたが、非常にカマンベールの風味が強かった。あまりにカマンベールの風味が強いので、好き嫌いがわかれるようであった(タント・マリーは閉店している)。
一方でユーハイムのカマンベールチーズケーキは、甘さとクリームチーズのアクセントにカマンベールがある感じだ。
だからといってカマンベールがいないというわけではない。その独特の風味は、アクセントとしてしっかり存在していて、奥深い味を楽しませてくれる。これは美味しい。
しっかりカマンベールの風味は感じれるので、カマンベールの風味が苦手な人は、ちょっときついかもしれない。
値段、カロリー、日持ち、購入方法など

値段 | 3個:756円 6個:1512円 |
カロリー | 1個264kcal |
日持ち | 製造日より21日(冷凍) 解凍後2日(要冷蔵) |
購入方法 | オンラインでのみ購入可能 |
ひとつひとつ丁寧に仕上げた、カマンベールチーズそっくりなかわいらしいチーズケーキ。口の中でとろけるチーズクリームの濃厚でまろやかな味わいをお楽しみください。北海道とオンラインショップだけでの販売です。
公式サイトより
Juchheim(ユーハイム)の歴史

日本洋菓子界に多大な影響を与えたユーハイム。やはりその歴史を語らないわけにはいかない。
創業者のカール・ユーハイムは戦争捕虜として日本にやってくる
ユーハイムの歴史は1909年、明治42年まで遡る。
ユーハイムの創業者であるドイツの菓子職人のカール・ユーハイム氏は、当時ドイツの租借地であった青島市(現中国山東省)の喫茶店に就職する。
しかし1915年の第一世界大戦で、青島市は日本に占領され、カール・ユーハイムは捕虜として大阪の収容所に収容された。後に広島の収容所に移動。収容所にいる時でも得意のバームクーヘンを焼いて腕を奮っていたという。
ちなみに同じように青島から日本に捕虜として連れてこられた人の中には、ドイツパンで有名な「フロインドリーブ」の創業者であるハインリヒ・フロインドリーブ氏や、ハムやソーセージで有名な「ローマイヤ」の創業者であるアウグスト・ローマイヤー氏もいる。
釈放後、カフェ・ユーロップの製菓部主任に
日本に収容されてから5年、カール・ユーハイムはようやく釈放された。異国地に突如として放りだされたユーハイム氏に、助けの手を差し伸べた人物がいた。当時横浜に本店があった明治屋の三代目社長・磯野長蔵氏だ。
磯野長蔵氏は、東京に新しい喫茶店をオープンすることを計画しており、その製菓部門に三年契約でユーハイム氏を雇ったのだ。
ちなみにその喫茶店というのが「カフェ・ユーロップ」だ。カフェ・ユーロップは、現在はユーハイムのブランドの1つになっており、銀座に店舗がある。
日本での生活が安定してきた折、ユーハイム氏は青島に残っていたエリーゼ夫人を呼び寄せ、ともに働くことに。ユーハイムがつくる本格的なバウムクーヘンやケーキは、当時日本にあった洋菓子よりも圧倒的にクオリティが高く、人気を呼んだ。ユーハイムがつくるレベルが高い洋菓子に触発されて、日本の洋菓子の全体のレベルも向上したという。
横浜で「E・ユーハイム」をオープンし独立
カフェ・ユーロップでの契約期間が終了した後、ユーハイム氏たちは、横浜・関内にうつり「E・ユーハイム」という名のお店で独立。当時の横浜には安く食事ができるお店が少なく、そこに目をつけてコーヒーつきの安いドイツ風料理店をオープンさせた。店は繁盛したという。
しかし1923年の関東大震災によって「E・ユーハイム」は消失してしまう。
神戸で今日のユーハイムの発祥となるお店をオープン
関東大震災から逃れて神戸に避難してきたユーハイム氏は、当初は神戸のトアホテルに就職するつもりだった。しかし偶然出会ったロシア人バレリーナ・アンナ・パヴロヴナ・パヴロワに「もう一度頑張りなさい。お金になんて何とかなるものです」と激励を受けて、再び開業に向けて動きだす。
救済基金から借りた3000円を元手に、サンノミヤイチという神戸の三宮にあった建物の1階に喫茶店「JUCHHEIM’S」を開店した。
これが今日のユーハイムの原型となるお店だ。ユーハイムが作るお菓子はまたたくまに有名になった。ユーハイムのお菓子を真似た商品がたくさん作られるほどだったという。
カール氏が働けなくなってしまう
ようやく腰を据えて店を営業できる思われた矢先、またしても悲劇が襲う。夫のカールが精神に異常をきたしてしまうのだ。
1935年に娘のヒルデカルドが高熱で、幼くして他界してしまったことや、この頃の第二次世界大戦を目前とした暗雲とした社会の雰囲気に、気が滅入ってしまったのかもしれない。ある記事によると、日中戦争の発端となった盧溝橋事件のニュースを聞いてから異常な言動が目立ちはじめたと書かれている。
戦争によって居場所を奪われ、戦争に人生が振り回されてきたカールが、やっと落ち着けると思った矢先、また戦争だ。気が病むのも無理はない。
カールの様子をみかねたエリーゼ夫人は、夫のカールを一時ドイツに帰国させる。数年のドイツでの療養の後、日本に帰国するが、以前までのカールはこそにいなかった。明るかったカールの性格は一変し、まともに働くことはできなかったのだ。
第二次世界大戦によって工場が損傷してしまう
さらに太平洋戦争がはじまるとユーハイムの弟子たちが次々に戦争に駆り出された。戦況の悪化によって物資も不足していった。つらい状況のなかでもユーハイムはドイツ海軍に支給するためのパンを焼いていたという。
しかし1945年6月の神戸大空襲によって、ついにユーハイムの工場が損傷してしまう。居場所を失われたユーハイムの家族は六甲のホテルに移り住むことに。その後、1945年の8月、カール・ユーハイムはホテルの椅子に座りながら静かに息をふきとったという。
敗戦後の日本に残されたエリーゼ夫人と長男カールの妻子は、ドイツに強制送還される。帰国するとユーハイム夫妻の長男であったカールフランツがウイーンで戦死したことが告げられる。追い打ちをかけるかのようにユーハイムを不幸が襲う。
戦争から戻ったユーハイムの弟子たちがユーハイムを再建
失意のどん底に陥るエリーゼ夫人であったが、ユーハイムが灯した光が消えることはなかった。戦争から帰還したユーハイムの弟子たちが、「ユーハイム商店」としてお店を再開。エリーゼ夫人を向かい入れるのだ。
1953年に日本に戻ったエリーゼ夫人は「死ぬまで日本にいる」と宣言し、80歳で永眠するまでユーハイムの役員などを努め、ユーハイムに尽力し続けた。
悲劇続きのユーハイムは、ハレの日の代表菓子に
戦争によって青島の自分の店を失い、再び自分の店をもった矢先に関東大震災で全焼。さらに二度目の戦争でまたしても店がなくなってしまう。
戦争と震災、大きな悲劇に振り回されて続けたユーハイムであったが、ユーハイム氏が生み出したバウムクーヘンは、現在では引出物として、手土産として多くの人に喜ばせている。
※参考
各種リンク(公式サイトなど)
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