今回は2019年頃からブームになり、チーズケーキの一種としてすっかり定着したバスクチーズケーキは現在どうなっているのかについて、考えたことを記事にしました。
バスクチーズケーキの誕生とブーム
バスクチーズケーキは、スペインとフランスにまたがる「バスク」で生まれたとされるチーズケーキです。発端はバスクにあるラ・ビーニャというバルで提供されていた、表面を焦がしたチーズケーキだとされています。
このチーズケーキに感銘を受けた日本人シェフが、日本で再現して発売するようになりました。ある人はバルのシェフにレシピを教えてもらい忠実に再現。またある人は自身の舌の記憶から再現。
日本で売られたそれらのチーズケーキは「バスクチーズケーキ」あるいは「バスク風チーズケーキ」といった名前で売られるようになりました。
2018年夏には港区に「GAZTA」、渋谷区には「BELTZ」の2つのバスクチーズケーキ専門店がオープンし、連日行列を作るほどの人気に。2019年春にはローソンから販売され前代未聞の大ヒットを記録しました。
バスクチーズケーキはブームになったスイーツがたどる模倣やフレーバー化が見られるようになりました。

トレンドスイーツとは距離を置きがちなパティスリーや洋菓子店からも販売されるようになったことは、その浸透ぶりをよく表しています。
ブームは落ち着いた一方、いつかのマリトッツォのように忘れられることなく、チーズケーキの一種として定着しました。特に、ラテを提供するようないわゆるカフェでは、バスクチーズケーキを扱う店が多い印象です。
すっかり一般的になったバスクチーズケーキは、様々なバリエーションを生み出してきました。本記事では、その進化の過程をいくつかの例を挙げながら紹介します。
フレーバーのバスクチーズケーキが登場
バスクチーズケーキブームが到来した当初は、バスクチーズケーキというだけで人が集まりました。バスクチーズケーキを販売する店が増えると、続いてはクリームチーズの産地や「サンセバスチャンで学んだレシピ」「本場の味わいを参考」といったように物語によって差別化を行う店が増えました。その後に起こったのが、フレーバー系の登場です。
チョコ、コーヒー、抹茶、ピスタチオなど、フレーバーを加えたバスクチーズケーキです。一般的なベイクドチーズケーキに様々なフレーバーがあるように、バスクチーズケーキにも様々なフレーバーが登場しました。こうしたフレーバー系の広がりは、複数の味を揃えたバスクチーズケーキ専門店という新たな業態も生み出しました。

断面を炙るバスクチーズケーキの登場
また差別化の1つの方法として登場したのが「断面を炙るバスクチーズケーキ」です。以下の写真はとあるカフェで見つけたバスクチーズケーキです。

プレーンのバスクチーズケーキを横に倒し、断面に砂糖をまぶしバーナーで炙ります。いわゆるキャラメリゼによって、焦げの苦みとパリパリした食感を楽しめます。
ちなみに炙るチーズケーキはバスクチーズケーキブーム以前からありました。ただし表面を炙るチーズケーキであり、こちらのような断面を炙るものではありません。
また断面を炙るチーズケーキはバスクチーズケーキが普及したからこそ誕生したといえます。バスクチーズケーキの大きな特徴の1つに、表面を焦がしていることがありますが、従来の炙りチーズケーキのように、表面を炙ってキャラメリゼしてしまっては、せっかくの焦げが台無しになります。
炙りの魅力をバスクチーズケーキと両立させる方法として生まれたのが、断面を炙るというアイデアだったのではないでしょうか。バスクチーズケーキのブームは、こうして断面炙りという新しいチーズケーキの形も生み出したのです。
焦がしバターにヨーグルトパウダー、あえて焦がさない 再解釈系の登場
バスクチーズケーキブームが少し落ち着き、定着のフェーズに入った頃に登場したのがバスクチーズケーキの再解釈です。
これは、従来の定番レシピにとらわれず、新たな材料や製法を取り入れることを目指したバスクチーズケーキです。いわばシェフたちによる「自分が理想とするバスクチーズケーキ」の追求です。
ブーム当初は、基本的な材料(クリームチーズ・生クリーム・卵・砂糖)で作る、本場に忠実なレシピが重視されていました。しかし定着期に入ると、ベースのレシピを踏まえながらも、作り手が「足りない」と感じるものを補ったり、実は不要だと感じるものを排除したり、独自のアイデアを反映させた、オリジナリティあふれるバスクチーズケーキが登場するようになりました。
その代表例が、ミシュラン獲得レストランで料理長を務めたシェフによるチーズケーキブランド「Mr. CHEESECAKE」です。焦がしバター、バニラ、練乳、ヨーグルトといった、ブーム当初には見られなかった材料を取り入れることで、従来とは一線を画す味わい、食感、風味を実現しました。
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もう一つの例が、主にフランス菓子を手がけるパティスリー「クリオロ」の、あえて焦がしすぎないバスクチーズケーキです。表面の焦げはバスクチーズケーキを象徴する要素の一つですが、クリオロはその「常識」を疑い、あえて焦げを抑えたバスクチーズケーキを開発しました。

「バスクチーズケーキは、必ずしもあれほど焦がさなくてもいい」という、大胆な再解釈の登場といえます
重ねバスクチーズケーキの登場
バスクチーズケーキがすっかり定着したここ数年で、特に見かける機会が増えるようになったのが「重ねバスクチーズケーキ」です。これは2つの異なるフレーバーのバスクチーズケーキを重ねて合わせたもので、たとえば、プレーンの上に黒ごま、あるいは抹茶の上に黒ごまといった、異なるフレーバーを合わせるといったものです。
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以前から存在はしていましたが、ここ最近は見かける機会が急増している印象があります。
興味深いのは、その出現場所の偏りです。重ねバスクチーズケーキは、ラテアートを施したカフェラテを提供するようなエスプレッソ系カフェではよく見かける一方、パティスリーや喫茶店、レストラン、コンビニやスーパーではほとんど見かけません。
これはカフェのメニューが「映え」を重視して考案されることと無関係ではないはず。2色の断面が映えるバスクチーズケーキは、味とは別に、SNS投稿に向いています。
おわりに
今回紹介した以外にも様々なバスクチーズケーキが登場しています。もはやバリエーションは出尽くしたのではないかと思うほどですが、お店の方の創意工夫はすごいもので、どんどん新たなタイプのバスクチーズケーキが登場します。今後もチーズケーキマニアとしてバスクチーズケーキの動向をチェックしていきたいと思います。





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