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チーズケーキ研究

チーズテリーヌとは何か? なぜ注目されるようになったのか?|レシピや市販品から考察するチーズテリーヌについて

チーズケーキ研究

2020年頃から、やや注目されているスイーツとして「チーズテリーヌ」がある。

チーズテリーヌは、チーズケーキの一種で「テリーヌフロマージュ」「フロマージュテリーヌ」などと呼ばれることもある。その大まかな特徴は、四角い形で、口どけを際立たせた質感であることだ。

チーズテリーヌは、これまでのチーズケーキにはない特徴を持ったチーズケーキとして、レア、ベイクド、スフレ、バスクに次ぐ第5のチーズケーキだと紹介されることがある。

私も気になっていくつかのチーズテリーヌを食べてみたのだが、従来のチーズケーキと大きな違いはわからなかった。しかしチーズテリーヌに対する注目度が上がっているのは確実である。チーズテリーヌに関する決定的な何かを、私は見落としているのかもしれない。それを調べるために、チーズテリーヌを色々な角度から調べてみた。

本記事では、チーズテリーヌのレシピや市販のチーズテリーヌなどからチーズテリーヌとは何なのか、なぜ注目されるようになったのかを考察していく。全体で1万を超えているので、気になる項目だけ読んでいくことをおすすめする。

結論を先取りするなら、チーズテリーヌは、ニューヨークチーズケーキと同じようにベイクドチーズケーキの1つの呼び方にすぎないといえる。レアやスフレのような決定的な特徴は見つからなかった。

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テリーヌから考えるチーズテリーヌとは何か?

テリーヌといえばフランス料理の前菜として出てくる食べ物である。チーズテリーヌは当然、その派生品であると考えられる。ではテリーヌとは何なのか。調べていくと、その定義はとても曖昧であった。チーズテリーヌはその曖昧なものから派生しており、より一層の曖昧さを持つ。

突き詰めると、チーズテリーヌとは、作り手がチーズテリーヌと命名したものである、といえる。

テリーヌとはテリーヌ型を使った料理のこと

まずはチーズテリーヌの重要な構成要素であるテリーヌについて考察していく。

テリーヌはもともとテラコッタで作られた容器(鍋)のことを指す言葉であったが、その容器で作る料理もテリーヌと呼ばれるようになった。

テリーヌは、中世から存在している伝統的フランス料理の1つで、テリーヌと呼ばれる型に、肉や魚をミンチにしたものや、野菜、果物などを型に詰め込んで、熱するか冷やすかして固める作る。基本的にどんな材料を、どんな組み合わせで詰め込んでもいいようで、テリーヌ本を開くと、実に様々なテリーヌのレシピが紹介されている。

テリーヌには、味や材料に関する決まりはなく、ただテリーヌ型を使っていれば、「テリーヌ」と呼べるようだ。

どんな容器もテリーヌ型になりえる

テリーヌ専門のレシピ本を開くと、テラコッタ製の容器ではなく、ガラス製やアルミ製、ホーロー製の型を使っているものが多い。いわゆるパウンドケーキ型と呼ばれているものを使用しているレシピもたくさん見つかる。また形も様々で、長方形をはじめとして、正方形、楕円、円など、いくつかのパターンがみられた。テリーヌといえば長方形をイメージするが、必ずしもそうとは限らないようだ。

つまり、どんな素材、どんな形の容器でも、テリーヌ型になりえる。料理人がテリーヌと名付けたのなら、それはテリーヌになりえるのだ。だとするとチーズテリーヌとは何なのか。

作り手が「チーズテリーヌ」といったらチーズテリーヌである

クリームチーズを肉や魚と合わせたテリーヌも「チーズテリーヌ」と呼ばれることがあるが、ここではひとまずデザートとしてのチーズテリーヌについてのみ考えることにする。

チーズテリーヌとは、テリーヌ型で作ったチーズケーキということになる。しかし前述のとおり厳密なテリーヌ型というものは存在せず、どんな形、どんな素材の型もテリーヌ型になりえる。ならば作った人が「チーズテリーヌ」と名付けたなら、それがなんであれチーズテリーヌであるといえる。

肝心なのは、作り手がチーズテリーヌと命名するかどうかだ。楕円形で、チーズを使っていなかったとしても、作り手が「チーズテリーヌだ」というなら、それは「チーズテリーヌ」としかいいようがない。厳密な定義など存在しないのだから。

一般的なイメージから離れたチーズテリーヌはチーズテリーヌなのか?

ただし、チーズテリーヌに対する一般的なイメージが存在するときに、そのイメージとはまったく異なるチーズテリーヌを出した場合、それはチーズテリーヌだと認識してもらえないのではないだろうか。パウンドケーキのようなふわふわものを「チーズテリーヌ」として販売する店があった場合、周りからは「あれはチーズテリーヌではない」と判断されてしまう可能性がある。

作り手がチーズテリーヌというならそれはチーズテリーヌではあるが、しかしあまりにも一般的なイメージと離れていると、受け入れてもらえない可能性がある。

ただし、これは逆に一般的なイメージから離れていないものであれば、何でも「チーズテリーヌ」と呼べるということでもある。それがたとえ、従来のベイクドチーズケーキとまったく同じ作り方であったとしても、チーズテリーヌにみえるのであれば、それはチーズテリーヌと呼べる。実際、後で紹介するように、従来ベイクドチーズケーキとそれほど変わらないものをチーズテリーヌとして紹介しているレシピはたくさんある。市販のチーズケーキにしても、これまでのチーズケーキと決定的に違う点があるとはいえない。

結局のところ、何でもチーズテリーヌになりえるのだ。チーズテリーヌっぽさがありさえすれば。

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レシピから考えるチーズテリーヌとは何か?

チーズテリーヌとは何か、その特徴を調べるために、「チーズテリーヌ」という名前がついているレシピを30ほどチェックした。その中で見られた共通点をまとめると、以下の3つになる。

  1. 長方形のケーキ型を使っている
  2. 乳製品を3種類以上使用している(クリームチーズ、サワークリーム、生クリームなど)
  3. 湯煎焼きにしている

チーズテリーヌのレシピは、概ね上記3点を満たしているものが多い。しかしこの3点を満たしていないレシピや、普通のベイクドチーズケーキとなんら変わらないレシピもたくさん見つかった。突き詰めて考えれば、チーズテリーヌとは、チーズケーキの呼び方の1つに過ぎない。

以下、詳しく解説していく。

長方形のケーキ型を使用

ケーキが型のサイズはレシピごとに異なるが、ケーキ型の形はほとんどが長方形を使っていた。

また型の種類に関しては、レシピのすべてがパウンドケーキ型と呼ばれる、菓子作りに使う型を指定していた。テリーヌづくりにおいて古くから使われていると考えられる、テラコッタ製で蓋がついているタイプのテリーヌ型を使用しているレシピは、1つも見当たらなかった。

チーズテリーヌの主張な特徴の1つは、長方形のケーキ型を使っていることだといえるが、「丸型でも代用可」としているレシピや丸型を指定しているレシピもあった。前述のとおり、楕円や丸のテリーヌ型も存在する。楕円のテリーヌ型を使って作ったチーズテリーヌは、間違いなくチーズテリーヌといえる。結局のところ長方形だろうが楕円だろうが、チーズテリーヌといえるのである。

乳製品を3種類使用するレシピが多い

チーズケーキのベースとなる材料はクリームチーズであるが、それ以外にも生クリームやサワークリームなどいくつかの乳製品をまぜて作るのが一般的である。

家庭向けのレシピの場合、普通のベイクドチーズケーキは、クリームチーズと生クリーム、あるいはクリームチーズとヨーグルトなど、2種類で作る。

一方でチーズテリーヌのレシピは、クリームチーズ、サワークリーム、生クリームなど3種類の乳製品を使用するレシピがほとんどである。確認した30のレシピのうち、実に24のレシピが乳製品を3種類以上使用していた。

その内訳は様々で、主に以下のパターンが見られた。

  1. クリームチーズ+生クリーム+サワークリーム
  2. クリームチーズ+生クリーム+サワークリーム+ヨーグルト
  3. クリームチーズ+生クリーム+ヨーグルト
  4. クリームチーズ+生クリーム+マスカルポーネ
  5. クリームチーズ+サワークリーム+ヨーグルト
  6. クリームチーズ+サワークリーム+バター

とくに1つ目(クリームチーズ+生クリーム+サワークリーム)の組み合わせが一番多く見られた。バターを混ぜるレシピ、マスカルポーネを混ぜるレシピ、乳製品4種を混ぜるレシピはそれぞれ1つのみであった。その他、クリームチーズと生クリームだけで作るレシピもいくつかみられた。

まとめると、例外はたくさんあるが、チーズテリーヌは乳製品を3種類以上使うことが特徴の1つであるといえる。3種類以上の乳製品を使用する理由は、口どけと濃厚さ、コク、風味の多様さを感じられるようにするためだろう。

湯煎焼き

確認した30のレシピのうち、すべてが湯煎焼きをしていた。

湯煎焼きとは、オーブンでケーキを焼く際に、天板(庫内の皿)に湯を入れて焼く方法である。ケーキ型がお湯に使った状態で焼く方法で、プリンやニューヨークチーズケーキも同じ焼き方をする場合が多い。

湯煎焼きをする理由は、それによって生地が適度に水分を保ち、しっとりした食感になるからだと一般的にはいわれている。後でも紹介するが、チーズテリーヌの口にいれたときの特徴の1つはしっとりした食感にある。しっとり感をもたせるために、どのレシピも湯煎焼きをしているのだろう。

ちなみに前述のとおり、ニューヨークチーズケーキも湯煎焼きをする。材料もニューヨークチーズケーキとチーズテリーヌは非常に似ている。ならばチーズテリーヌは、長方形のニューヨークチーズケーキということもできる。

その他に見られたレシピにおける特徴

前述の3つの特徴以外にも、バニラの風味をつける、コーンスターチを使う、卵黄を使うなどの特徴が見られた。

バニラビーンズ、あるいはバニラオイルなどでバニラの風味をつけるレシピは16(30中)のレシピでみられた。

コーンスターチを混ぜるレシピは、19(30中)のレシピでみられた。一般的なベイクドチーズケーキは薄力粉を使用する例が多いが、チーズテリーヌの場合、コーンスターチのみ、あるいはコーンスターチと薄力粉を使うレシピが見られた。ただし、薄力粉だけを使うレシピもある。

半分以下ではあるが、11(30中)のレシピで、卵黄のみを使う、あるいは卵黄と全卵の両方使うレシピがみられた。一般的なベイクドチーズケーキは全卵のみを使う。卵黄を使うレシピは少数派ではあるが、チーズケーキに卵黄を使うレシピはチーズテリーヌくらいであると考えられる。

一般的なベイクドチーズケーキと大きな違いはない

いくつかチーズテリーヌのレシピをみてきて、大まかな共通点をピックアップすることはできるが、全体的にみれば、一般的なベイクドチーズケーキと大きくは変わらないと結論づけられる。実際、一般的なベイクドチーズケーキをまったく同じレシピを「チーズテリーヌ」としている例もたくさん見受けられたし、ニューヨークチーズケーキのレシピとほとんど同じであるものも多い。

チーズテリーヌは、オリジナルのレシピが存在するわけでもなく、見本となるものが存在するわけでもないので、思い思いのチーズテリーヌが出現してしまう。100人いたら100パターンのチーズテリーヌが存在するといえる。しかもそれらは、従来のチーズケーキのレシピの範疇に収まるものがほとんどである。

結局のところ、チーズテリーヌはチーズケーキの別の呼び方にすぎない。立ち位置としては、ニューヨークチーズケーキと同じであり、レアやスフレのようにジャンルの1つとして確立できるほどの特徴は持ち合わせていないと考えても問題はないだろう。

※今回調査したレシピは表にまとめている
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1jaeJlmkigVx2Qsnm5r-A9KlwpJhTg0i8UZzvCkAAo8U/edit?usp=sharing

コンビニや洋菓子屋のチーズテリーヌから考えるチーズテリーヌとは?

チーズテリーヌという商品名で販売されているチーズケーキをいくつか実際に食べてみた。

まず広く見られる特徴としてあげられるのが以下の2点である。

  • 四角である(主に長方形)
  • 口どけを重視している(しっとり系の質感である)

四角、口どけ重視が市販のチーズテリーヌの特徴

「チーズテリーヌ」という商品名で、コンビニから販売された商品を見てみると、そのどれもが四角であることがわかる。

実際に食べてみると、ほぼすべてがバニラの風味を添加していた。ただし2021年7月にローソンから発売されたチーズテリーヌはバニラの風味はなく、レモンを添加していた。

またどれも従来のチーズケーキよりも、水分、油分が多い質感であった。いわゆる「しっとり」「口どけ」といった言葉で表現されるような質感を際立たせた仕上がりになっていた。

洋菓子屋の「チーズテリーヌ」もいくつか試してみた。食べたのは「チーズテリーヌ」という商品名、あるいは「テリーヌフロマージュ」「フロマージュテリーヌ」など、「テリーヌ」という単語が商品名に使われているチーズケーキに限定している。

やはりどれも四角(主に長方形)であり、「口どけ」を際立たせた仕上がりになっており、バニラの風味を添加していた。ただし、「テリーヌバスクチーズケーキ東京&ワインバーtukuruno」のチーズテリーヌは、バニラの風味を添加していない。

まとめると、バニラの風味は絶対的とはいえないものの、次の2つの要素を満たしているものが多いといえる。

  • 四角(主に長方形)
  • 口どけを重視

チーズテリーヌっぽいが、チーズテリーヌではないもの

先の2つの要素を持っているが、「チーズテリーヌ」という名前を使っていない商品は多数存在する。たとえば、Mr. CHEESECAKEが販売しているチーズケーキは、先に紹介した「四角」「口どけを重視」など、チーズテリーヌの要素を持っており、またチーズテリーヌとして紹介されることが多い。

しかし実際は、「チーズテリーヌ」という商品名では売っていないし、Mr. CHEESECAKEのオーナーは自身のSNSで「Mr. CHEESECAKEはバスクでもニューヨークでも、チーズテリーヌでもありません。」といったように、チーズテリーヌではないことを明言している(https://twitter.com/Tam30929/status/1189400343374790657)。

他にもチーズテリーヌの特徴をもっているが、チーズテリーヌという商品名で販売していないチーズケーキはたくさんある。

「チーズテリーヌ」という言葉はいつ頃から存在するのか?

「チーズテリーヌ」という食べ物、あるいは「チーズテリーヌ」という単語がいつから存在しているのだろうか。その歴史を追ってみた。

2012年3月「チーズテリーヌ」という言葉が使われる

まず、「チーズテリーヌ」という言葉がいつから使われているのかを調べてみたところ、2012年3月20日に、Twitterにおいて「チーズテリーヌ」という言葉を含む文章が投稿されていることがわかった。投稿は、京都にあるsongbird coffeeというカフェのアカウントによるもので、店のスイーツメニューを紹介する内容であった。

ソングバードコーヒーのあまいもんは、さくらんぼのパウンドケーキ、ラズベリークリームのロールケーキ、バナナのチーズテリーヌ、そしてそしてキャラメル羊羹があります。

https://twitter.com/songbird_coffee/status/181938074731810817、 2012年3月20日 、閲覧日2021年8月16日

バナナを使ったチーズテリーヌではあるが、ベイクドタイプであり、現在みられるチーズテリーヌとほぼ同じである。写真は、食べログの投稿で確認できた(https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260203/26013578/dtlrvwlst/B9417627/#4828763)。

先の投稿は2012年3月20日になされたもので、それ以前に「チーズテリーヌ」という言葉が使われた例は、ネットにも本にも見つからなかった。つまり、先の投稿が「チーズテリーヌ」という言葉が初めて使われた瞬間である可能性がある。と同時に、ツイートをしたsongbird coffee(ソングバードコーヒー)は、デザート系のチーズテリーヌを初めて提供した店である可能性も高い。

ちなみに後述するが、出版されたレシピ本のなかで、現在のようなチーズテリーヌのレシピが公開されるのは2012年6月である。それよりも前にチーズテリーヌを提供していたsongbird coffeeは、チーズテリーヌをオリジナルで開発している可能性がある。

2014年10月チーズテリーヌのレシピが掲載される

本のなかで「チーズテリーヌ」という単語が登場するのは、2014年10月に出版された『焼き菓子』(坂田阿希子 河出書房新社)というレシピ本のなかである。この本に掲載されているチーズテリーヌのレシピは、現在よくみる、卵黄やバニラビーンズ、コーンスターチを使うレシピである。現在よくみるチーズテリーヌは、このレシピがベースになっている可能性が高い。

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ちなみに「チーズテリーヌ」という言葉は使っていないが、2012年6月に出版された『テリーヌブック』(伊藤まさこ、坂田阿希子、仁平綾 パイインターナショナル)では、「チーズのデザートテリーヌ」というレシピが掲載されている。このレシピは、前述の『焼き菓子』に掲載されたチーズテリーヌのレシピと同じである。どちらも坂田阿希子が著者として参加しているので、『テリーヌブック(2012年)』のなかで「チーズのデザートテリーヌ」として掲載していたものを、『焼き菓子(2014年)』のなかでは「チーズテリーヌ」という名称に変更して掲載したと考えてもいいだろう。

2017年12月クックパッドで話題に

「チーズテリーヌ」という言葉、および菓子の知名度が一気に上がったのは、おそらく2017年12月頃である。

2017年12月14日にcookpad newsに投稿された『【注目スイーツ】真っ白な「チーズテリーヌ」って知ってる?』では、下記のように、この時期チーズテリーヌを検索した人が増えたことが書いてある。

最近クックパッドの中で、検索が急上昇している注目ワードが「チーズテリーヌ」

【注目スイーツ】真っ白な「チーズテリーヌ」って知ってる?、coockpad news、2017年12月14日、閲覧日2021年8月16、https://news.cookpad.com/articles/27357

クックパッドでは、2014年にはすでにチーズテリーヌのレシピが掲載されており、その後も定期的にチーズテリーヌのレシピが投稿されているが、なぜ2017年12月頃になって、急にチーズテリーヌを検索する人が増えたのだろうか。調べてみたが、テレビ番組や雑誌で紹介されたというような記録は見つからなかった。

1つきっかけとして考えられそうなのが、2017年11月6日の、あるインフルエンサーによるInstagramの投稿である。その投稿には、坂田阿希子のレシピを参考に作ったというチーズテリーヌの写真が掲載されており、その投稿が2017年11月7日時点で4000いいねを得ている。(投稿URL、https://www.instagram.com/p/BbJbnc2lTqh/、当時すでに4000いいねを獲得していたことは、別の人のTwitterでの投稿からわかる https://twitter.com/nikunanode_/status/927735025830846465)。

先のInstagramでの投稿によって、チーズテリーヌのレシピを調べる人が急増したと考えることもできる。もちろんそうではない可能性もあり、究極的な要因はわからない。

クックパッドで話題になって以降、2018年頃には、デザートとしてのチーズテリーヌを提供するお店がちらほら現れている。たとえば2018年4月19日には、2019年、2020年にチーズテリーヌで注目を浴びるh.u.g-flower(ハグフラワー)がチーズテリーヌの販売を開始している。

2019年10月人気テレビ番組で紹介される

2019年10月、チーズテリーヌは再び注目される。きっかけは2019年10月29日に放送されたテレビ番組の「マツコの知らない世界」で、チーズテリーヌが紹介されたことによる。放送では、チーズテリーヌが、ベイクドチーズケーキ、レアチーズケーキ、スフレチーズケーキ、バスクチーズケーキに次ぐ第5のチーズケーキとして紹介された。

全国放送のテレビ番組で「チーズテリーヌ」という言葉が使われ、チーズテリーヌというケーキが紹介されたのは、おそらくこの時が初めてである。

「マツコの知らない世界」で紹介されて以降、他のテレビ番組でもチーズテリーヌが取り上げられるようになる。後述するが、その後チーズテリーヌは大手コンビニ3社からも発売されており、ネットニュースではトレンドフードとして何度も紹介されている。チーズテリーヌが注目を浴びるようになったのは、「マツコの知らない世界」で紹介されたことがきっかけであるといって間違いない。

また、ちょうど2018年の終わり頃からバスクチーズケーキが注目されており、そのおかげでチーズケーキに対する注目度が高くなっていた。前述の「マツコの知らない世界」もそれを受けて企画されたものである。そしてそのなかで紹介された新しいチーズケーキに、業界が注目したのだろう。

2020年10月コンビニでチーズテリーヌが販売される

人気テレビ番組で紹介されたことがきっかけで、2017年のクックパッドニュース以降、チーズテリーヌは再び注目を浴びることになる。2020年10月30日にはローソンがチーズテリーヌを商品化。次いで2021年2月5日にファミリーマート、同年3月2日にセブンイレブンがチーズテリーヌを商品化した。チーズテリーヌが注目されていたことがわかる。

その後は、スーパー向けの洋菓子を製造している大手洋菓子メーカーのプレシアからも、チーズテリーヌが販売され、一般化の様子が見て取れる。

ちなみにプレシアから発売されたチーズテリーヌは円形である。これまでのチーズテリーヌはどんなレシピであれ、四角だったが、ついに円形のチーズテリーヌが発売された(https://www.plecia.co.jp/products/8812/)。

チーズテリーヌはなぜ注目されるようになったのか?

前述のとおり、チーズテリーヌは2020年10月に大手コンビニから発売され、それ以降、他の大手コンビニから続々と販売されるに至っている。

チーズテリーヌは、2012年にはすでに存在しており、2017年にはネットニュースの記事になっている。しかし2020年まで、コンビニで発売されることはなかった。それが2020年から、コンビニで次々と発売されている。これはチーズテリーヌという食べ物が注目されている証拠であるといえるだろう。

人気テレビ番組での紹介とチーズケーキブームが主要因

ではなぜチーズテリーヌは注目されるようになったのか。大きな要因は2つあると考えている。

  • 人気テレビ番組「マツコの知らない世界」で紹介された
  • 2019年頃に行ったバスクチーズケーキブームによって、チーズケーキに対する注目度が高まっていた

まず大きな要因として考えられるのは、人気テレビ番組である「マツコの知らない世界」で、新しいチーズケーキとして紹介されたことだろう。

本番組はTBSテレビ系列で毎週火曜日のゴールデンタイムに放送されているバラエティ番組である。視聴率が14%を超える回もある人気番組だ。2019年10月29日には「チーズケーキの世界」の世界と題して、様々なチーズケーキが紹介されるとともに、これまでにない新しいチーズケーキとして、チーズテリーヌが紹介された。この番組での紹介がなければ、チーズテリーヌは、コンビニで販売されたり、ネットニュースで何度も紹介されたりするほど、注目されることはなかっただろう。

もう1つ忘れてはいけないのが、当時、チーズケーキに対する注目度が高まっていたことだ。2018年夏頃から、これまでにないチーズケーキとしてバスクチーズケーキはブームになっていた(バスクチーズケーキブームの考察はこちら)。2019年にローソンが発売したチーズケーキの「バスチー」は記録的なヒットになった。「マツコの知らない世界」でチーズケーキの特集が組まれたのは、ほぼ確実に、バスクチーズケーキに端を発するチーズケーキブームから影響を受けているだろう。

2018年頃から、そもそもチーズケーキに対する世間の注目度は上がっていたと考えられる。そんなときに、人気バラエティ番組で、新しいチーズケーキとしてチーズテリーヌが紹介された。それがきっかけとなり、チーズテリーヌはメディアで紹介される機会が増え、さらに注目度が上昇し、大手コンビニが商品化するに至った。このようにしてチーズテリーヌは注目されるようになったと考えられる。

今後、チーズテリーヌはさらなるブームになるのか

前述のとおり、大手洋菓子メーカーのプレシアから発売されたチーズテリーヌは円形であった。チーズテリーヌの一般的な特徴である四角とは違う、丸いチーズテリーヌが堂々と発売されたのである。

このように、当初のものとは大きく変わってしまうのは、トレンドフードの宿命である。かつてのティラミスやバスクチーズケーキも、ブームが過熱すると変形した。味や形に関係なく、アイスクリームやスナック菓子、菓子パンなどに「ティラミス風」や「バスクチーズケーキ風」といったワードがつけられるようになった。

ロッテ チョコパイバスクチーズケーキ

最近でいえばマリトッツォも同じ状況だ。生クリームをパンで挟んだだけの食べ物が「マリトッツォ風」として出回っている。普通のたまごサンドが、「マリトッツォ風」と名付けられていることすらある。そのうちスナック菓子にも「マリトッツォ」というワードが使われるようになるだろう。

ブームが過熱すると、ありとあらゆる食べ物に流行っているワードが使われる。結局のところ、流行っているのは食べ物ではなく、ワードなのである。

これからチーズテリーヌも同じ道をたどるのだろうか。スナック菓子や菓子パン、アイスクリームなどに「チーズテリーヌ」というワードが使われるようになるのだろうか。もしそうなったとしたら、チーズテリーヌはブームになった食べ物として歴史に残るだろう。

ただし現在は、それほどの勢いはない。このまま熱が冷めるのであれば、チーズテリーヌはごく一部で注目されたにすぎないチーズケーキとして過去のものになるだろう。

おわりに:チーズテリーヌはどこから生まれたのか?

レシピや市販品など、あらゆる角度からチーズテリーヌを観察してみた。振り返って考えると、チーズテリーヌとは、チーズケーキを別の言い方で呼んだものに過ぎないと結論づけられる。チーズケーキをガトーフロマージュと呼んだり、フロマージュ・キュイと呼んだり、ニューヨークチーズケーキと呼んだりするのと同じように、チーズテリーヌと呼んだにすぎない。

もちろん、四角い、バニラの風味があるなど、大まかな特徴をあげることはできる。しかし、レアやスフレのような決定的な特徴があるとはいえない。立ち位置としては、ベイクドチーズケーキの1つの形態であるニューヨークチーズケーキとほぼ同じであろう。

テリーヌからではなく、テリーヌショコラからチーズテリーヌへ

それにしてもチーズテリーヌという食べ物はどうして生まれたのだろうか。最後に少し空想してみたい。

テリーヌの日本での受容を追ってみると、少なくとも1981年には『テリーヌとパテ』というテリーヌ専門の本が出版されている。また畑中三応子の『ファッションフード、あります。』によれば、テリーヌは1980年代にはすでにデパ地下で簡単に買えるものになっていたという。

テリーヌは1980年代からすでに一般的であった。しかしチーズケーキとテリーヌを融合させた、チーズテリーヌが登場するのは2012年であり、テリーヌの一般化からチーズテリーヌの登場までおよそ30年の隔たりがある。

そもそも、テリーヌとチーズテリーヌは、似ても似つかない料理である。共通点はテリーヌ型を使っていることくらいである。チーズテリーヌは、「テリーヌのような食感」と説明されることがあるが、テリーヌといっても野菜を使ったものや、ゼリー状のもの、肉を使ったもの、魚を使ったものなど、様々な種類があり、食感も多種多様である。テリーヌとチーズテリーヌの食感が似ているとは思えない。前菜のテリーヌが、ある日突然、チーズケーキのようなスイーツになるとは到底思えない。

ちなみにデザートとしてのテリーヌは、1998年8月に出版された『暮しの手帖 第3世紀』のなかに登場している。ただし、これは果物を使ったゼリー状のものである。このようなゼリー状の、デザートとしてのテリーヌは、他のテリーヌ専門書のなかでもたびたび紹介されており、こういったものは昔からあるようだ。しかし、これもチーズテリーヌとは似つかない。

おそらく、チーズテリーヌは、フレンチのテリーヌから派生したものではない。そうではなくショコラテリーヌや抹茶テリーヌなど、ケーキ系のテリーヌから派生したものなのではないだろうか。

チーズテリーヌが生まれたと考えられる2012年には、すでにショコラテリーヌが存在している。たとえば、2001年11月17日に放送された「キューピー3分クッキング」ではテリーヌショコラが紹介されている(https://www.ntv.co.jp/3min/recipe/20011117)。このレシピはケーキ系テリーヌ第一号の可能性がある。また2009年11月に出版された『テリーヌ』(渡辺麻紀 池田書店)のなかでも、ショコラテリーヌが紹介されている。

チーズテリーヌが生まれる2012年には、すでにショコラテリーヌという、ケーキとしてのテリーヌが存在していた。またチョコレートケーキとチーズケーキは、混ぜて焼くだけできるスイーツという共通点をもっている。ならばチーズテリーヌは、ショコラテリーヌからインスピレーションを受けて生まれた可能性が十分にある。テリーヌからチーズテリーヌが生まれたのではなく、ショコラテリーヌからチーズテリーヌが生まれた。そう考えるほうが、合点がいく。

しかしそうだとしたら、 2001年11月17日に放送された「キューピー3分クッキング」におけるテリーヌショコラは、どこから生まれたのだろうか。その答えはこれから調べていきたい。

年表(目安)

以下はチーズテリーヌを考察するうえで、重要だと思われる出来事のみを掲載した年表である。

参考資料

書籍

  • 柴田書店出版部『パテとテリーヌ』柴田書店、1981年1月
  • 『ふらんす 56』 白水社、1981年4月
  • 『暮しの手帖 第3世紀 75』暮しの手帖社、1998年8月
  • 沢田豊、水井朋子『テリーヌ!テリーヌ!テリーヌ!トラディショナルをカジュアルに』旭屋出版、2002年11月
  • 旭屋出版mook『テリーヌとパテ教則本 : 古典から現代まで』旭屋出版、2007年10月
  • 渡辺麻紀『テリーヌ』池田書店、2009年11月
  • 伊藤まさこ、坂田阿希子、仁平綾 『テリーヌブック』パイインターナショナル、2012年6月
  • 坂田阿希子『焼き菓子』河出書房新社、2014年10月
  • オレンジページ編集部『オレンジページ 2020年11/2号』オレンジページ、2020年10月
  • Mizuki『簡単なのに、自慢できる Mizukiの 家にある材料で作るとっておきのお菓子』KADOKAWA、2018年11月
  • 坂田 阿希子『あまくないからおいしいお菓子 ギリギリの甘さで仕上げる新しいおいしさ。』家の光協会、2018年11月
  • 畑中 三応子『ファッションフード、あります。』筑摩書房、2018年3月

Webページ

その他、確認したSNSなどはページ上に随時記載している。レシピ考察の際に確認したレシピは以下のスプレッドシートにまとめている
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1jaeJlmkigVx2Qsnm5r-A9KlwpJhTg0i8UZzvCkAAo8U/edit?usp=sharing

※その他、チーズケーキを考察した記事

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