コンビニ、カフェ、スーパーなどあらゆるお店で見かけるチーズケーキ。非常に身近なスイーツです。一方で一口にチーズケーキといっても、千差万別で、レアやベイクド、バスクなど色々な種類があり、それぞれ製法や発祥地によってその種類は驚くほど多彩です。
本記事では、チーズケーキについて、その種類やそれぞれの特徴などを紹介します。ぜひこの機会にチーズケーキの知識を深め、自分好みの一品を見つける参考にしていただければと思います。
レアチーズケーキ

日本でもっともポピュラーなチーズケーキの1つがレアチーズケーキです。コンビニ、スーパー、カフェ、レストランなど、どこでも販売されているほか、作るのが比較的簡単なことからホームメイドでも人気があります。また日本では、レアチーズケーキという呼び方ではないものの、1950年代からすでに食べられていたチーズケーキでもあります。
その最大の特徴は焼いていないこと。低温で固まるような材料、たとえばゼラチンのような材料を使うことで、ケーキ状に成形します。
ちなみにこのタイプのチーズケーキは日本以外でも普及しているのですが、「レア」と呼んでいるのは日本だけのようです。他国ではノーベイクチーズケーキ(No Bake Cheesecake)だったり、ゼラチンチーズケーキ(Gelatin Cheesecake)と呼ばれています(最近ではレアという呼び方がされる場合もあるようです)。
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ベイクドチーズケーキ

レアチーズケーキと並んでポピュラーなのがベイクドチーズケーキです。こちらもレアと並んでコンビニ、スーパー、カフェなど、あらゆる場所で見かけます。また焼く必要があるものの、他のお菓子に比べると簡単に作れるので、ホームメイドでも人気があります。
特徴といえば「焼く」ことでしょうか。「baked(焼いた)」という名前がついているだけなので、焼いていればどれもベイクドチーズケーキと呼べることになります。そのためクッキー生地があったりなかったり、ふわふわした食感だったりとろっとした食感だったりと、そのバリエーションは様々です。
ちなみに焼くタイプのチーズケーキは、1910年代の日本の料理書に登場しています。一方で「ベイクドチーズケーキ」という名前が使われるようになったのは1970年代後半と、意外と最近です。
また最近では「ベイクドチーズケーキ」ではなく「ベイクチーズケーキ」とするチーズケーキも見られるようになりました。
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スフレチーズケーキ(チーズスフレ)

続いては、スフレチーズケーキです(チーズスフレと呼ばれることも)。スーパー、コンビニ、チェーン店から高級パティスリーまで、様々な場所で販売される人気のチーズケーキです。
その最大の特徴はスポンジケーキのようなふわふわな食感を楽しめること。オーブンで焼くので、ベイクドチーズケーキの一種ともいえるのですが、メレンゲを使う点に大きな違いがあります。メレンゲを使うことで、他のチーズケーキにはないスポンジケーキのようなふわふわな食感を作り出します。
ちなみにこのチーズケーキは、海外では「Japanese Cheesecake(ジャパニーズチーズケーキ)」と呼ばれることもあり、海外では、日本生まれのチーズケーキだと紹介されることも。日本で最も有名なスフレチーズケーキのお店「りくろーおじさん」は、日本人だけでなく外国人にも人気があります。

日本での登場は早く、1926年には”チーズソフレー”という名前で、西洋料理を紹介する文献でそのレシピが紹介されています(『趣味と実用の西洋料理』)。ただしこのレシピでは砂糖を使っていないので、現在のチーズスフレとは違う、おつまみのようなものだったと考えられます。
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ニューヨークチーズケーキ
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ベイクド、スフレ、レアと同じくらいよく見かける「ニューヨークチーズケーキ」。ベイクドチーズケーキとの違いがいまいちよくわからないという方も多いと思います。基本的には普通のベイクドチーズケーキよりも、しっとりしていてなめらかな食感で、濃厚でありながらさっぱりした後味が特徴です。ただし定義や決まりはないので、ニューヨークチーズケーキといっても味や食感は様々です。
その名前のとおりニューヨークで生まれたとされているチーズケーキで、その歴史は1900年初頭にまで遡ることができます。その起源はもちろんニューヨークですが、ニューヨークで提供されていたようなチーズケーキが、外部の人によって「ニューヨークチーズケーキ」と呼ばれるのようになり定着したそうです。ちょうど現在のバスクチーズケーキのような。またこのニューヨークチーズケーキは、現在一般的に食べられているベイクドチーズケーキの原型であるといわれることも。
日本で「ニューヨークチーズケーキ」という呼び名が使われるようになったのは、1990年代であると推測しています。もちろん、類似のチーズケーキがそれよりも過去に存在した可能性はあります。一方で、レアやスフレに比べると最近のチーズケーキであるともいえます。
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バスクチーズケーキ

ここ数年で一気に人気になった「バスクチーズケーキ」。以前は一部の専門店やカフェで販売されるのみでしたが、現在ではカフェ、パティスリー、コンビニ、スーパー、寿司店など、ありとあらゆる場所で提供されています。
ベイクドチーズケーキの一種といえるのですが、チーズや生クリーム、卵、砂糖の量の割合を多くすることで、普通のチーズケーキよりも濃厚な味を実現。さらに高温で短時間焼き上げることで、表面を焦がしキャラメルのような苦みのアクセントのある味と、とろりとした食感の、従来のチーズケーキにはない味と食感を実現しています。
バスクチーズケーキは、スペインとフランスにまたがるバスク地方の美食の街「サンセバスチャン」で販売されるチーズケーキでした。そのチーズケーキを食べた日本人シェフがその味を再現。代表的な店として「カオリーヌ菓子店」「GAZTA」「BELTZ」があります。2018年から2019年にかけていくつかのバスクチーズケーキ専門店が話題になることで、バスクチーズケーキの知名度も爆発的に上昇し、トレンドフードの1つになりました。
一過性のブームで終わることなく、新たなチーズケーキとして定着。特にカフェにおいては、流行に敏感なインスタグラマーを引き付けるアイテムとして機能している面もあります。
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2層のチーズケーキ(ドゥーブルフロマージュ、ダブルフロマージュなど)

ベイクドチーズケーキの上にレアチーズケーキをのせるような、2種類のチーズケーキを重ねるタイプです。代表的なのは洋菓子店「ルタオ」が販売する「ドゥーブルフロマージュ」で、これはベイクドチーズケーキの上にマスカルポーネのレアチーズムースをのせた2層のチーズケーキです。

他にもこのタイプのチーズケーキは「ダブルフロマージュ」「ダブルチーズケーキ」などの商品名で販売されることもあり、層の組み合わせもレアとベイクドだけでなく、レアとスフレ、スフレとベイクドなど様々なバリエーションがあります。レア、スフレ、ベイクドの3種類を重ねたチーズケーキが販売されたこともありました。

2層のチーズケーキの普及は、1998年にルタオが「ドゥーブルフロマージュ」を販売したことが契機になったと考えられます。またルタオのドゥーブルフロマージュは、北海道・富良野にある洋菓子屋「フラノデリス」のオーナーの藤田氏が考案したものであり、ルタオは藤田氏から技術指導を受ける形で、ドゥーブルフロマージュを販売したそうです。ルタオの人気、販売力によって、ドゥーブルフロマージュは広まり、現在、2層のチーズケーキの代名詞にもなっています。
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クレームダンジュ(crème d’ange)

「クレームダンジュ」もしくは「クレームアンジュ」と呼ばれるチーズを使ったデザートがあります。これはクリームチーズなどのナチュラルチーズに生クリームをあわせたガーゼで包み、水を切って冷やした純白のチーズスイーツで、中にベリーソースを入れたタイプのが一般的です。冷やして固めるようにして作るのでレアチーズケーキの一種ともいえます。
それほど知名度が高いとはいえませんが、コンビニやカフェやケーキ店で時々見かけることがあり、過去には格安寿司店で発売されたことも。
クレームダンジュは、1900年頃にフランスのアンジュ地方で生まれた、生クリームと卵を使って作られていたデザートが起源です。美食評論家キュルノンスキーが「神々のごちそうだ」と絶賛したという話も。フランスでは必ずしもチーズを使うわけではないようで、またチーズを使う場合でもフロマージュブランを使用することが多いようです。日本ではフロマージュブランのそれほど普及していないので、クリームチーズを使うのが一般的です。
日本におていは、1980年4月発行の『女性自身』のなかで、当時、渋谷にあった「メゾンドフランス」という店の「クレメ・ダンジュー」が写真付きで取り上げられています。
また「クレーム・ダンジュ」によく似た名前の「クレーム・アンジュ」がありますが、これは「クレーム・ダンジュ」とほぼ同義です。「アンジュ」は、フロマージュブランをベースにしたクリームに、フランボワーズソースを閉じ込めたデザートです。島田進シェフが開発し、日本で普及させたとされています(いつ頃から販売していたかは現在調査中)。日本でクレームダンジュといえば、もっぱらこのタイプです。おそらく「クレーム・アンジュ」として発売したものが、他の店では「クレーム・アンジュ」としてコピーされ普及していったのでしょう。

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カッサータ(Cassata)

冷凍のままでも提供されることが多いレアチーズケーキの一種「カッサータ」。リコッタチーズに生クリームやドライフルーツ、ナッツなどをまぜたチーズデザートで、現在ではクリームチーズをベースにして作ったものや、冷凍ではなくチルドのものまで様々です。コンビニやチェーンカフェでも時々発売されるほか、イタリアンレストランのデザートにも供されることがあります。
カッサータは、イタリア・シチリアで生まれたデザートで、1575年にはすでに存在していたとされています。「シチリアンカッサータ」と紹介されることも。ちなみに原産地であるイタリアでは、日本のものとは全然違う、緑や赤などのマジパンを使ったものがカッサータとして普及しています。

日本のカッサータは、どちらかといえばフランス菓子のヌガーグラッセに近いでしょうか。
・カッサータとは何か? その歴史と特徴、日本と海外のカッサータの違いについて
ティラミス(Tiramisù)

日本でも専門店も存在するほど人気のある、イタリア発のチーズデザート「ティラミス」。チーズケーキの一種といわれてもピンとこないかもしれませんが、「マスカルポーネ」というナチュラルチーズを主原料にしています。実際にチーズケーキのレシピをまとめた本では、よくティラミスが紹介されていますし、菓子図鑑、菓子辞典では「イタリアのチーズケーキ」と紹介されることもあります。
一方で他のチーズケーキとは大きく違った点も。たとえばココアパウダーやコーヒーを染み込ませたスポンジを使う点、クリームチーズではなくマスカルポーネを使う点などは、ティラミスならでは。
ティラミスがイタリアで誕生したのは、意外と新しく、1970年頃という説があります。その名前は「私を引っ張りあげて」や「私を元気づけて!」といった意味があり、これは夜遊びに出かける前の景気づけとして食べられていたことに由来するという説もあります。
日本では1990年代に一大ブームを巻き起こしました。このブームのきっかけは、1990年に発売された女性誌『Hanako(4月号)』での紹介だとされています。現在では、コンビニやケーキ店に欠かせない定番スイーツとして定着し、抹茶や紅茶のティラミス、全体を白くした「白いティラミス」、さらには韓国発祥の割って食べるティラミスなど、多様なバリエーションが展開されています。

おすすめのティラミス:ミスターチーズケーキのティラミス(tiramisu)をお取り寄せ実食レビュー
アイアシェッケ(Eierschecke)

日本で目にすることが稀なドイツ発祥のチーズケーキに「アイ・アシェッケ」があります。クリームチーズの層に加え、そぼろ状の生地、カスタードの層、クッキー生地の層と、多様な味と食感が特徴のチーズケーキです。
ドイツ・ドレスデンの地方菓子として知られ、アイア(Eier)はドイツ語で卵、シュッケ(Schecke)は、「まだらの」という意味です。ケーキ表面のまだら模様からそのような名前になったとか。

サクサク、ザクザク、ほろほろ、しっとりなどバラエティー豊かな食感のなかに、小麦粉、卵、ナチュラルチーズなど、それぞれが旨味が溶け合う、楽しい味と食感が魅力です。
日本でもわずかに販売している店を見たことがあります。もっとも有名なのがドゥブルベ・ボレロで「アイアシェッケといえばここ」というくらい有名です。他にもドイツ菓子専門店で見かけることがあるほか、レシピもネットで簡単に調べることができます。
・【ドゥブルベ・ボレロ】のアイアシェッケを実食|ドイツ・ドレスデンのチーズケーキ
トゥルトフロマージュ(le tourteau fromage)

トゥルトフロマージュ(le tourteau fromage)は、フランスのプワトゥ地方に19世紀から伝わる伝統菓子です。フランスではポピュラーで、現在でも販売しているお店が多くあるそうです。
このお菓子は、ボール状の器に小麦粉から作るタルト生地様の生地を敷き、その上にメレンゲやチーズなどを混ぜたアパレイユを注いで、焼きあげます。バスクチーズケーキのように表面をあえて焦がすのが特徴です。羊のミルクからつくられるチーズを使う場合もあります。
ちなみに失敗から生まれたお菓子だそうで、表面が焦げているのはそのためです。
表面は「サクッ」としており、中身はふわふわでどこかカステラに近い質感です。底はしっとり系のパイ、もしくはタルトに近く、いうなればふわふわタルトでしょうか。全体的にあっさりした味わいで、焼き菓子よりも、パンケーキのようなパンと焼き菓子の中間くらいの味わいのなかに、ふわりと乳製品の風味がある印象です。
日本でも販売しているお店がいくつかあり、東京・尾山台のオーボンヴュータンが特に有名です。以前は成城石井でも販売されたことがあるようですが、現在では入手が大変なチーズスイーツとなっています。




・さらに詳しい解説:トゥルトフロマージュ(tourteau fromage)とは何か? 歴史や味の特徴などを解説
世界のチーズケーキの種類と特徴
チーズケーキはあらゆる国で食べられている人気のケーキで、ギリシャでは紀元前から食べていたという説もあるほどです。最後に、日本ではみられない世界のチーズケーキを少しだけ紹介します。
パスハ(パースハなど – Paskha)

ロシアなどで、イースターのときに食べるチーズを使ったケーキとして「パスハ(Paskha)」があります。カッテージチーズやバターなどを混ぜた生地を型に押し込み、水分を切って成型します。
日本のレアチーズケーキの原型になっているともいわれることがあり、ケーキを紹介する本にその名前が登場することも(お菓子の由来物語 猫井登)。
日本で販売しているお店は見たことがありません。Youtubeにはたくさんレシピがあるので、興味がある方は作ってみてください。
フィアドーネ(フィアドンなど fiadone)
フィアドーネはイタリアに近いフランス領のコルシカ島のチーズケーキです。コルシカ島において羊やヤギのミルクから作られるブロッチュ(brocciu)というチーズを使ったシンプルなチーズケーキです。見た目は普通のベイクドチーズケーキですが、Youtubeにもたくさんレシピがあり、けっこうポピュラーなチーズケーキのようです。
ウベチーズケーキ(Ube cheesecake)

主にフィリピンで見られるチーズケーキで、紫芋を使っているのが大きな特徴です。冷やすタイプと焼くタイプがあるとのことです。Youtubeで検索するとたくさんレシピがでてくるので、けっこうポピュラーなチーズケーキのようです。材料も日本で入手できそうなものばかりです。
■おわりに
定番の「レア」「ベイクド」から、一世を風靡した「バスク」、さらには「アイアシェッケ」や「トゥルトフロマージュ」といった少し珍しい世界の伝統菓子まで、様々なチーズケーキを紹介してきました。
同じ「チーズケーキ」という名前でも、国や地域、歴史的背景によって、材料も製法も、そして味わいも全く異なることがお分かりいただけたかと思います。
普段何気なく食べているコンビニのチーズケーキも、その発祥や定義を知ってから食べると、また違った味わいに感じられるかもしれません。「これはニューヨークスタイルに近いな」「これはスフレとベイクドの中間かな?」といった視点を持つことで、日々のスイーツ選びがより一層楽しくなるはずです。
チーズケーキの世界はまだまだ奥が深く、これからも新しいトレンドや、まだ見ぬ伝統菓子が注目されることでしょう。私自身も「チーズケーキマニア」として、これからも年間300食以上を食べ続け、その魅力を探求・発信し続けていきたいと思います。
ぜひこの記事をきっかけに、色々な種類のチーズケーキを食べ比べて、あなただけのお気に入りの一品を見つけてみてください。




